モーリス・ユトリロ
モーリス・ユトリロ

モーリス・ユトリロとは、パリ郊外出身の現代フランス画家です。
不遇な生い立ちから精神的に不安定で、アルコールに依存していました。母は画家のシュザンヌ・ヴァラドンですが、幼い頃から絵画の勉強をしていたわけではありません。

生活や精神が荒れ、たどり着いた先が絵画だったモーリス・ユトリロ。今回は、モーリスの寂しい生い立ちと作品の魅力・特徴を解説します。

1883年（明治16年）－1955年（昭和30年）
フランス出身の風景画家。
家庭環境に恵まれず、不遇の少年時代を過ごす。
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後に美術評論家のミゲル・ユトリロが認知したため、モーリス・ユトリロへ改姓した。
改姓前の名はモーリス・ヴァラドン。
母も画家だったが病弱で問題行動も多く、精神病院への入院が絶えなかった。治療の一環として絵を描き始め、ほとんど独学で絵画を学んだ。

1919年に開催した個展がきっかけに、作品の評価が高まる。生まれ育ったパリを詩情豊かに表現した作品が特徴。

生い立ち

モーリス・ユトリロが生まれたのは、1883年のフランス・パリ郊外にあるサノワでした。
母は画家のシュザンヌ・ヴァラドンで、画家のモデルをしながら絵画を学んだ人物です。息子のモーリスとは異なり、人物画を多く残しています。

モーリスが生まれた頃、シュザンヌは絵画の制作にのめり込んでおり、息子の世話を母親に任せきりだったと伝えられています。モーリスは身体が弱く精神面でも不安定で、てんかんの発作を起こしたこともありました。

情緒不安定は就学後も続き、精神科へ通院しながら学校に通いました。この頃、スペイン人の画家・美術批評家のミゲル・ユトリロがモーリスを認知し、ヴァラドン姓からユトリロ姓へ改姓します。

1896年に初等教育を修了し、ロラン中学に入学するも1900年に素行不良で退学しています。退学後は母の再婚相手の紹介で仕事を得たものの、長くは続かずにアルコール依存症が悪化。精神病院へ入院して、アルコール依存症の治療を始めます。
治療で出会った医師の勧めで、モーリス・ユトリロは当時住んでいたフランス北部・モンマニーの風景を描くようになりました。

モーリス・ユトリロは主に独学で絵画を学び、1908年頃からアルフレッド・シスレーやカミーユ・ピサロなど、印象派の影響を強く受けます。
以前は構図や素材にこだわりは見られませんでしたが、印象派の影響を受け始めた頃から構図にこだわり、さまざまな素材を使うようになります。

しかし、あくまでモーリスは趣味の意味で制作しており、絵を売ることは考えていませんでした。
モーリス・ユトリロが高く評価されたのは、1909年以降です。画商が付き、個展や競売会へ作品を出品するようになります。

1919年、ルプートル画廊で開催した個展が好評を博して一躍注目を集めます。1928年には、レジオン・ドヌール勲章を受章しました。

母・シュザンヌとの確執

半ば育児放棄の状態だった幼少期から、自立した青年期になっても、モーリス・ユトリロは母との確執を切り離せませんでした。

精神的に不安定なモーリスは経済的な自立ができず、母の恋人や再婚相手に頼らざるを得なかったからです。そのため、アルコール依存症の悪化や寛解を繰り返し、精神病院への入退院も激しかったとされています。
結局、母との確執はモーリスの絵が売れ始めてからも続きました。

作品の特徴とその魅力

モーリス・ユトリロの作品は、大きく「白の時代」と「色彩の時代」に分けられます。
1909年頃から白を多用した風景画が増え、白の時代と呼ばれました。主にパリ・モンマルトルの風景を描き、建物を白の絵具で厚く塗り重ねて描いていることが特徴です。

1920年頃からは、白の時代に代わって色彩の時代が始まります。
色彩の時代では白い建物が減り、色彩豊かな画面構成に仕上げています。鮮やかな青・赤・黄色を使って、街の華やかさを描いているのが特徴です。

白の時代から作品の評判が広まり始めましたが、色彩の時代が始まった頃から、個展や受賞が続きました。自身の結婚や母の死もこの頃で、モーリス・ユトリロが精神的・肉体的に解放された時期でもあります。
鬱屈とした精神状態が「白の時代」を生み出し、解放によって「色彩の時代」が始まったと言えるでしょう。

モーリス・ユトリロは問題を抱えながらも成功した風景画家

モーリス・ユトリロは子どもにふさわしくない家庭環境から、精神的不安定を抱えて育ちました。

画家だった母は恋多き女性で、モーリスも度々巻き込まれていたようです。

彼を救ったのは、意外にも母の仕事でもあった絵画でした。治療の一環として絵を描き始めたモーリス・ユトリロは、不遇を乗り越えて高い評価を得ます。

作品は白を基調とした「白の時代」と鮮やかな色彩が特徴の「色彩の時代」に大別され、モーリスの精神面を映し出しました。