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唐木花台「紫檀他一式」は、高級唐木材を用いて制作された一連の花台セットで、主に床の間や書斎、床飾りに用いられる木工芸品です。紫檀や黒檀、紫檀に似た黄檗(おうばく)などの重硬で美しい木材を巧みな木組みと透かし彫りで仕上げ、花器や香炉、飾物を引き立てる調度として珍重されます。
唐木花台は中国南宋・明代の家具意匠を起源とし、鎌倉・室町時代に渡来、日本でも桃山期以降に床の間文化の発展とともに普及しました。江戸時代には数寄者が茶道具や書画、香炉と組み合わせて用い、明治以降は迎賓館や数寄屋建築の高級調度として制作が続きました。
主材の紫檀はインドネシア産の最高級材で、深い赤褐色と緻密な木理、耐久性を備えます。他に黒檀は艶やかな黒色と硬度、黄檗は淡黄色から淡黄褐色を呈し、唐木同士の組み合わせによる色彩コントラストを楽しめます。
花台は一体成形ではなく、柱脚・棚板・貫(ぬき)・長押(なげし)などを組み上げる木組み構造を採用。蟻組みやほぞ組みで接合し、金具や釘を使わずに強度と柔軟性を両立させています。透かし彫りや彫刻を入れた貫が意匠のアクセントです。
透かし彫りには吉祥文様として唐草・連珠紋・花卉文が多用され、側面や脚部に施される飾り彫刻は「花鳥図」「菊牡丹」「流水紋」などの伝統柄が見られます。彫刻の深さや線の流麗さが作者・工房の技量を示すポイントです。
真作を見分けるには、唐木特有の木理(きざ)の連続性、節や色斑の自然さを観察。木組み継手の隙間具合、透かし彫りの切断面の滑らかさ、彫刻面の彫り跡の揺らぎ、漆仕上げの厚みや経年による艶の深まりが確認ポイントです。後補品は組接ぎが機械的で、彫刻が浅く均一になる傾向があります。
紫檀製唐木花台一式は希少性から数十万~数百万円が相場。黒檀や黄檗を組み合わせた二重三重の豪華意匠品、彫刻家や名工の作例は百万円~千万円単位で取引されることもあります。共箱や来歴書付、旧蔵家・作家の銘が揃う完全品はさらに高値となります。
唐木材は乾燥や湿気の変動で割れや反りが生じやすく、温度20℃前後・湿度50%前後の安定環境で保管します。直射日光は避け、埃は柔らかな馬毛筆で優しく払い、研磨剤や化学薬品を使わず乾拭きで手入れするのが基本です。
床の間に設置する際は、背板の壁面や掛軸の色調と調和させ、花台上に置く花器や香炉の高さ・形を揃えてバランスを取ります。照明を低角度から当てると透かし彫りの影が壁面に落ち、彫刻の凹凸がより一層引き立ちます。
唐木花台「紫檀他一式」は、唐木材の美と木工技術・彫刻芸術が融合した総合工芸品です。素材・構造・意匠・木組み・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切に扱うことで、その歴史的・美術的価値を末長く次世代へと継承できます。
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