Menu
純銀製ボンボニエールは、貴金属である銀(Ag)を99%以上含む純銀材から鍛造・鋳造される小型の装飾容器です。本来は結婚式や祝賀会で来客に砂糖菓子(ボンボン)を配るための器ですが、その精緻な造形と銀の輝きから、宝飾品同様に工芸・骨董品として高く評価されます。
ボンボニエールはフランス宮廷文化に由来し、18世紀後半にヨーロッパ貴族の間で流行。日本には明治期以降の洋風文化受容期に輸入・模倣され、銀器の名工たちが和洋折衷のデザインを施して制作しました。現代では婚礼記念品やインテリアオブジェとしても用いられます。
純銀は展延性・延性に富み、鍛金(板打ち)で薄く平らに延ばして胴部を打ち出し、鋳金で蓋摘みや装飾部品を製作します。銀の柔らかさを活かした鎚目(ハンマード)仕上げや、彫金(チゼル彫り)によるレリーフ装飾が高級品の特徴です。
定番は玉型(オーヴァル)や円筒型ですが、菱形や六角形、シェルモチーフなど多彩。蓋にはリボン結びや王冠型の摘みが付き、胴部にはアラベスク文様・花綱文・ミルグレイン細工が施されることが多いです。側面にエナメル彩や象嵌を組み合わせた逸品もあります。
底面や蓋裏には「純銀」「SILVER」「Ag950」などの純度刻印とともに、メーカー名や作家サイン、小さなロジウムプレート製シリアル番号を刻む例があります。英国王室勅許ブランドや著名銀器工房の刻印は価格と信頼性を大きく高めます。
真作判定では、刻印の字体・深さ、銀の比重測定(約10.5g/cm³)による純度検査、鍛金・鋳造痕の自然さを確認。鍛金の鎚目は均一過ぎず、彫金の彫り跡に揺らぎがあることが本物の証です。後年品は機械彫りやメッキ銀で代用するため注意が必要です。
純銀製ボンボニエールは、サイズや装飾、作家・ブランドによって価格が変動します。無銘・小型品は数万円〜十数万円、著名ブランドや作家物、象嵌やエナメル彩付きの大型・豪華品は百万円以上、希少なアンティーク品は数百万円規模で取引されます。
銀は硫化による黒変(いぶし銀化)を防ぐため、専用の銀磨きクロスで定期的に軽く拭きます。保管は湿度40–60%、温度20℃前後の安定環境が望ましく、個別に柔らかな布や銀布袋に包んで酸化を遅らせます。化学薬品や研磨剤の過度使用は避けてください。
展示時は、柔らかな間接光を斜め上から当てると、銀面の艶や鎚目・彫金の陰影が際立ちます。鏡面仕上げ部分には反射を抑えるマット台座を用い、リボン摘みや象嵌の煌めきを引き立てましょう。
純銀製ボンボニエールは、銀器製造技術と洗練されたデザインが融合した総合工芸品です。素材・技法・刻印・来歴・状態を総合的に鑑定し、適切な手入れと保管を行うことで、その歴史的・美術的価値を次世代へと継承できます。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。