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古伊万里大皿は、江戸時代前期から中期(17~18世紀)に磁州窯系の陶工が佐賀・伊万里港を経て輸出した染付・色絵磁器の大型皿です。直径30~50cm級のサイズで、食卓だけでなく式典や節句の飾り皿としても用いられ、藩主や大名家、商人層に愛されました。
元来、伊万里焼は中国景徳鎮窯の青花写し技術を基に発展しました。元禄期以降、独自の図案や色絵釉調が確立し、大皿は長崎出島を通じて西欧諸国でも珍重。大名家は大皿を陳列棚に並べることで、国際的権威と贅を誇示しました。
素地は伊万里特有の硬質白土を轆轤で挽き、素焼後に染付下絵を施します。呉須(コバルト顔料)による青花の線描を基調に、松竹梅、唐獅子、鳳凰文など吉祥図柄を描画。色絵大皿には赤・黄・藍・緑の上絵具を重ね、金彩を加える豪華版も見られます。
大皿の外縁には波唐草、内縁には連珠文を巡らせ、中央に三つ巴や桜流水など大画面構成を取ります。染付大皿は松竹梅を組み合わせた「吉祥連続文」、色絵大皿は「牡丹唐草文」や「色絵割取文」などが人気を博しました。
真作判定では、双輪高台の削り跡、素地の青み、呉須の発色濃淡、筆致の勢いを観察。色絵は上絵具の層厚や金彩の粒子、釉薬面の貫入具合で時代を読み解きます。後補品は釉面が均一すぎ、金彩に人工的剥がれが見られることが多い点に注意。
保存良好な古染付大皿は10万~50万円が相場。色絵金彩大皿や希少図柄の一対は100万~300万円以上で取引されることがあります。共箱や古箱書、来歴書付がある完全品は価格が飛躍的に上昇します。
陶磁器は衝撃や急激な温湿度変化に弱く、貫入部に汚れが入りやすい性質があります。埃は柔らかな筆で払い、化学洗剤や食器洗浄機の使用は避けてください。直射日光を避け、湿度50%前後・温度20℃前後の環境で保管することが望まれます。
古伊万里大皿は、江戸期の国際交易文化と日本磁器技術の粋を示す逸品です。図柄・技法・釉調・高台形状・来歴を総合的に鑑定し、適切な保存管理を行うことで、その歴史的・芸術的価値を次世代へと継承できます。
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