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「角笛と少年」は、影絵作家・藤城清治(ふじしろ せいじ、1924–)による代表作の一つで、巨大な角笛を吹く少年のシルエットが、色彩豊かな背景のステンドグラス風装飾に浮かび上がる幻想的な作品です。1970年代以降の制作と推定され、藤城独特の光と影のコントラストが際立ちます。
藤城清治は東京芸術大学在学中から影絵制作を始め、紙を切り抜いて光源にかざす手法を確立。以降、数百点もの影絵作品を発表し、国内外で高い評価を得ました。切り絵は厚紙と黒染和紙を用い、背景に重ねる彩色や照明計画が完成度を左右します。
本作は、黒染和紙を切り抜いたシルエットをアクリル板に挟み込み、背面に彩色ガラス風シートを貼る構造。額装はアルミフレームで、ガラス越しに影絵を鑑賞します。経年に伴う和紙の緩みや微細な黄変、アクリル表面の擦れが見られますが、大きな破損はなく良好と言えます。
真作判定には、作家の肉筆サインと落款、制作年の記載、裏面の制作番号シールを確認します。和紙の切り口が均一か、彩色シートの貼り合わせに気泡や剥がれがないか、額装のビス留め位置が初期装定かを詳細に観察します。
本作品は、藤城清治美術館所蔵の初期少量制作版の一枚で、共箱と作家直筆の証明書が付属。来歴を示す書簡には、作家自身が題名と制作年を記し、美術館に寄贈された経緯が綴られています。
藤城のオリジナル影絵作品は一点物のため流通量が極めて限られ、近年のオークション落札実績では数十万〜百数十万円が相場です。本作クラスの中型額装(50×70cm程度)は、状態と来歴完備で100万円前後の評価が一般的です。
影絵作品は背面照明との相性が重要で、LEDスポットや壁面照明を用いると影の輪郭が鮮明になります。直射日光や高温多湿を避け、額の裏蓋を外して定期的に換気することで、和紙の劣化を抑えられます。
藤城清治の影絵は、工芸と絵画、照明デザインが融合した特殊ジャンルです。「角笛と少年」は、その中でも詩情豊かなストーリーテリング性が高く、コレクターの間でも希少価値が高い作品として注目されています。
「角笛と少年」は、藤城清治の影絵技法と幻想的世界観が結実した逸品です。素材・技法・サイン・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切な展示・保存管理を行うことで、その芸術的価値と歴史的意義を末長く楽しむことができます。
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