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金工細工金具付き袋物とは、革・布・木綿などの袋物や小物入れに、真鍮・銀・金などの金属製金具を装着し、装飾性と機能性を高めた工芸品です。口金、留め金、飾り金具、引手、透かし金具など多様な意匠が施され、バッグや懐紙入れ、印籠袋、香袋など幅広い用途で愛用されます。
金工細工金具付き袋物は江戸時代中期以降、町人文化の成熟とともに普及しました。武家の刀装具技術が町方に伝わり、錺職(かざりしょく)の技術者が袋物用金具を手がけるように。明治期には西洋のバッグ留め金具技術も融合し、和洋折衷の美を示す工芸品として発展しました。
口金(くちがね)は袋の開閉を容易にし、シンプルな円形から檜垣模様、菊唐草、宝相華文など多彩な浮彫が見られます。留め金具は「がま口」「桐沈金具」「袋鋏」などがあり、透かし彫りや象嵌、彫金細工で高級感を演出。引手には金鎖や玉飾りを組み合わせる例もあります。
金具素材には純銀、銀合金、真鍮、銅、銅合金、14〜24金メッキが使われます。鋳造、板打ち出し、彫金、象嵌、鍛金、彫漆(ちょうしつ)など多段階の技法を駆使し、一つの金具に複数技法を組み合わせることで立体的かつ精緻な装飾が可能になります。
東京の錺職では三宅一正、京都では池永康晟、金沢では柴田徳太郎などが名工として知られます。流派ごとに彫金の線の深さや金めっきの色調、象嵌の貝殻使いなどに特色があり、作家印や裏面の刻印から真贋や来歴を判定できます。
真作判定には、金具裏面の鋳型跡や刻印、メッキ層の厚み、彫金や象嵌の仕上がり精度、留め金具の動作の滑らかさを確認します。後補品は金具表面が均一すぎたり、機械彫りの痕跡が残ったりする場合が多く、細部の手仕事痕で見分けられます。
小型の懐紙入れ用口金付き袋物は数万円から、がま口バッグや印籠袋の豪華金具付きは十数万〜数十万円、名工作や純銀・純金メッキの場合は百万円を超える例もあります。共箱・来歴書付の完全品はさらに高評価を受けます。
金具は酸化や硫化で変色しやすいため、使用後は柔らかな布で汗や埃を拭き取り、中性洗剤の水拭きは避けます。布地部分は虫害と湿気に注意し、湿度50%前後・温度20℃前後の環境で保存。金具の留め具部分には負荷をかけず、衝撃を避けて保管します。
金具付き袋物は、金工細工と地紋織物や絞り染め、漆塗り裂地など布地との調和が鑑賞ポイントです。複数点を並べて金具意匠の違いを比較したり、茶席や書斎で実用と装飾を兼ねたりすることで、工芸の歴史と技術を五感で楽しめます。
金工細工金具付き袋物は、錺職の高度な金属技術と日本の伝統染織が融合した逸品工芸です。金具意匠・技法・刻印・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切な扱いと保存管理を行うことで、その歴史的・美術的価値を次世代へと継承できます。
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