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リュージュ社は、1865年にスイス・サン・クロワで創業した世界的オルゴールメーカーで、高精度な歯車機構と豊かな音色で知られます。リュージュオルゴールは、ミュージカルジュエリーや大型家具調オルゴールまで多彩なラインナップを持ち、機械式自動演奏装置としてだけでなく、装飾芸術品としても高く評価されます。
創業当初は懐中時計や小型機械楽器の修理・製造を手がけ、1870年代以降オルゴールメカの開発に注力。19世紀末には自社製シリンダー式機構と交換式ディスク機構を完成させ、20世紀前半は豪華なケース付き大型オルゴールが貴族や資産家に愛用されました。
シリンダー式は、金属シリンダーに打たれたピンがスチール櫛歯を弾く方式で、復元性と音量が特徴。ディスク式は旋盤成形された鋼鉄円盤を用い、交換可能なディスクで多彩な楽曲再生が可能です。リュージュは両方式を高精度に製造しました。
リュージュ機械の歯車には高級合金鋼を用い、耐摩耗性・耐久性に優れます。ゼンマイ駆動のネジ式巻き上げ機構は巻き戻しが滑らかで、回転速度調整用のダンパー(ブレーキ)も装備。音程精度と安定した演奏時間が骨董品としての価値を高めます。
ケースはローズウッド、マホガニー、ブビンガなど希少銘木を使用し、象嵌細工や金具装飾を施す豪華仕様が多く見られます。ミュージカルジュエリーには貴石・真珠象眼、エナメル彩、メタルパーツの緻密な装飾が施され、宝飾品としての美術価値も併せ持ちます。
クラシック・オペラ・シャンソン・ワルツなど多彩なジャンルを収録。ディスクは大径(24cm以上)から小径(6cm程度)まで数種類あり、各ディスクに10~30曲を刻印。交換用ディスクの希少性や初期盤の保存状態が取引価格に大きく影響します。
ムーブメントには「REUGE」「ST. CROIX」「SWISS MADE」刻印があり、シリアル番号から製造年を特定できます。ケース底板や裏蓋にも型番や製造コードが残され、真贋鑑定や来歴調査の重要資料となります。
木製ケースは乾燥割れや虫喰い、金属部はサビや油切れに注意。ムーブメント内のグリース劣化やバネの疲労は動作不良を招くため、専門技師による定期的なオーバーホールが必要です。
ミュージカルジュエリー(小型宝飾型)は状態と装飾内容で50万~300万円、大型家具調オルゴールは300万~1,000万円超の落札例もあります。初期19世紀型シリンダー式メカや未使用ディスク多数付属品付きは特に高値評価されます。
刻印の字体や位置、シリアル番号の様式、ディスク刻印の精度を確認。ケース装飾や木地仕上げがオリジナルか、後補品やリフィニッシュかも慎重に判定します。
奏でられる曲目やディスクの入れ替え、多彩なケース意匠を集めることで、音楽史と工芸史を楽しめるコレクションが形成できます。展示時はオルゴール台やガラスケースを用い、演奏と鑑賞を組み合わせると魅力が増します。
直射日光・高温多湿・振動を避け、常に水平を保って設置。演奏後はムーブメントを静かに停止させ、ディスク交換時は指紋や油分を付けず、布手袋の着用を推奨します。
リュージュオルゴールは、精密機械技術と装飾美術が融合したスイスの至宝です。ムーブメント・ケース・ディスク・刻印・来歴を総合的に鑑定し、適切なメンテナンスと保存管理を行うことで、その歴史的・芸術的価値を末永く楽しむことができます。
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