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徳田正彦(とくだ まさひこ、1921–2005)は、昭和から平成にかけて日本の現代陶芸を代表する作家の一人です。兵庫県に生まれ、岡山・備前焼の伝統を基礎に備前技法を修得。1950年代より彩釉技法を独自に研究し、自然釉と酸化還元焼成による豊かな色彩表現を追求しました。国内外の陶芸展で数多く受賞し、名実ともに高い評価を得ています。
彩釉香炉は、香を焚くための香炉本体に、釉薬の多重掛けと変化を活かした色彩美を融合させた工芸品です。徳田正彦の作品では、透明感のある瑠璃色や黄緑、紫・琥珀など多彩な釉調が特徴で、炎の揺らぎに応じて光を受け色が微妙に変化します。茶席のみならず室内装飾としても楽しめる芸術性が魅力です。
素地は備前の赤土を混合した陶土を使用し、轆轤挽きまたは手びねりで成形。素焼き後、透明釉や酸化銅・コバルト・鉄などの色釉を重ね掛けし、1,250℃前後の窯で酸化焼成もしくは還元焼成を行います。窯詰めの位置や薪の燃焼状態で釉面に貫入や斑点が生じ、偶然の景色を作品に取り込む意図的窯変技法を多用します。
香炉の形状は、三足円形、円筒形、扁壺形など多様。胴に浅い刻文を入れた上で釉薬を施し、釉の流れや滴りが文様と相まって有機的な造形美を生み出します。蓋には透かし彫りで唐草や雲文を配し、香炉内部の灯りや香煙が透過して幻想的な陰影を描く設計です。
徳田正彦作の真贋を見分けるには、底裏のサイン「正彦」印、共箱の作家箱書き、釉面の変化ムラ、貫入具合、釉層の厚みを確認します。釉のムラが人工的均一ではなく、色調が微妙に層を成すこと、刻文の凹凸が自然であることが本物の大きな特徴です。
徳田正彦の彩釉香炉は、形状・大きさ・釉調の美しさで価格が変動します。小型(直径10cm前後)のものは30万~50万円、中型(20cm程度)は80万~150万円、大型や希少意匠は200万円以上が相場です。共箱・仕覆・作家直筆の添状付きはさらに高値となります。
陶器は急激な温湿度変化で貫入に汚れが入るため、温度20℃前後・湿度50%前後の環境で展示・保管します。埃は柔らかな筆でそっと払い、化学洗剤や硬いスポンジは避けてください。釉面に強い衝撃を与えると欠けやひびが生じやすいので、取り扱いには細心の注意が必要です。
徳田正彦の彩釉香炉は、備前の素朴な土味と現代的な色彩表現が調和した逸品です。素地・釉薬・窯変・刻文・作家印・共箱を総合的に鑑定し、適切な保存管理を行うことで、その芸術的価値と工芸技術を長く楽しむことができます。
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