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屏風(一双買)とは、二曲一双または六曲一双など左右対をなす二面揃いの絵屏風を指します。「一双買」は、一対(向かい合わせ)で購入する意味で、対柄が連続して物語や景色を繋ぐ構成が特徴です。壇上飾りや床の間の格式を高め、座敷、茶室、書斎などにおける空間演出に欠かせない調度品です。
屏風は中国伝来の風除け・仕切り具から発展し、平安時代に日本に定着しました。室町・桃山期には豪華絢爛な狩野派や琳派の大画面が生まれ、江戸期には町衆文化の発展とともに小型の掛屏風や見返り屏風も登場しました。一双買は、格式を示す能舞台や茶席、婚礼調度などに用いられ、対の屏風がシンメトリーに空間を引き締めます。
屏風一双は、屏風紙(または絹本)を柾目の上から和紙で裏打ちし、前面に絵画を施します。骨骸は檜材や桐材の木枠に和紙を貼り、蝶番には金属金具または紙蝶番を用います。表装裂地には金欄や緞子、緑青緞子などを組み合わせ、四方縁や風帯、軸先(陶製・竹製・木製)にも意匠を凝らします。
一双買屏風には、四季花鳥図、山水風景、歴史人物物語(源氏絵、義経絵など)、吉祥文様(松竹梅、寿老人図)などが多用されます。左右を繋ぐ構図では、山川の流れや道筋を跨いで連続させ、観る者を絵の中へ誘う動線設計が巧妙です。金箔下地に墨・岩絵具・彩色を重ねた豪華屏風もあれば、墨一色で洗練された水墨屏風も人気です。
絵師は狩野派、琳派、土佐派、四条派など各流派に属し、下絵→彩色→金箔押し→仕上げの工程を経ます。表具師は裏打ち替え、裂地合わせ、華紋金具取り付けを手仕事で行い、屏風一双の完成度を極めます。近現代では、名表具師・名絵師の共作屏風が展覧会や蒐集市場で高く評価されます。
真作鑑定では、絵師の筆致、岩絵具の粒子感、金箔の浮き具合を確認。骨骸の経年変化(木地の飴色化、和紙裏打ちの微細ひび割れ)や蝶番の金具刻印、裏打ち和紙の版木・刷毛痕が自然かを観察します。表装裂地の裂地地質や風帯・軸先金具の錆・経年変色も来歴証明の手掛かりです。
江戸期狩野派や琳派の大画面一双は、状態良好な完全品で数百万円~千万円以上が相場。明治以降の近代作家物屏風は作家名と画題で異なり、数十万~数百万円。小型掛屏風一双や復刻品は比較的手頃で数万円~数十万円で取引されます。「一双買」で揃う完全品は希少性が高く、市場価値が飛躍します。
屏風は直射日光や湿気、埃に弱く、絵面と裏打ちの間にカビや虫損が生じやすい性質があります。展示はUVカットガラス越し、照明は間接光を用い、常設は短期間に留めて巻き畳みを行い、桐箱や風帯袋で保管します。定期的な裏打ち替えや専門表具師による点検が望ましいです。
屏風一双買は、対称性と連続性による絵画美のドラマ性が楽しめる逸品です。左右に分かれた大画面が織り成す物語や風景は、鑑賞空間を一気に格調高く演出します。季節や行事に合わせて一双を入れ替えることで、伝統美を日々の生活に取り入れられる点も魅力です。
屏風一双買は、日本絵画史・表具技術史の縮図ともいえる総合芸術品です。絵師・表具師の技法、画題・文様、骨骸・絵面・表装の経年変化を総合的に鑑定し、適切な保存管理を行うことで、その文化的価値と美術的価値を次世代へと継承できます。
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