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中棗とは、茶道において抹茶をためる棗のうち、手になじみやすい中型サイズを指します。茶席で多用される標準的な大きさで、主に薄茶用として用いられることが多い器種です。「即中斎書付」とは、表千家家元を務めた茶人・即中斎(1885–1945)が共箱や仕覆の内桐箱に墨書し、落款・印を添えたことを意味し、真品鑑定の重要な証明となります。
即中斎は表千家第十六代家元として活躍し、近代茶道の普及と伝承に尽力した茶人です。書家としても高い評価を受け、箱書きには流麗かつ端正な筆致が特徴的で、その墨跡に価値が認められます。茶会場での采配や文化勲章受章など、公的な実績が書付の権威をさらに高めています。
即中斎書付の中棗には、通常「中棗 銘○○」「表千家十五世 即中斎書付」といった内容が墨書されます。箱書きは来歴を示す重要資料で、漆塗りの仕覆には作者家元の花押(かおう)や家紋が刺繍されることが多く、箱・仕覆を含めた完全品の保存状態が評価対象となります。
中棗は木地に漆を何層も重ねた漆器製や陶磁器製、竹工製などがあり、本作例では木胎漆塗のものが一般的です。漆の種類(朱・黒・溜・曙など)や蒔絵飾りの有無で格が変わり、素地の木目や下地象牙粉の厚み、研ぎ出し仕上げの滑らかさが鑑定ポイントとなります。
蒔絵中棗では、金銀粉を用いた高蒔絵や平蒔絵、沈金、研出蒔絵など多彩な技法が見られます。四季草花図、松竹梅、流水紋など伝統文様が意匠化され、即中斎家元の美意識と茶の湯の精神を反映したデザインになっていることが評価されます。
即中斎書付中棗の真贋を見分けるには、まず箱書き墨書の筆跡・印章の鮮明さと文字の太細に注目します。漆面の色調や厚み、研ぎ出し跡の滑らかさ、蒔絵の金銀粉の密着度と微細な剥落の有無も重要です。仕覆の紋刺繍や箱裏の和紙の劣化具合は、経年変化を示す手がかりとなります。
完全な即中斎書付共箱・仕覆付き中棗は、骨董市場で数十万円から百万円以上で取引されることがあります。漆の質、蒔絵意匠の優劣、書付の鮮明度、保存状態により価格が大きく変動し、名品としてオークションに出ると高値で競り合う傾向があります。
漆器製の中棗は湿度変化や直射日光に弱く、乾燥しすぎると漆割れ、湿度が高いとカビが発生しやすい性質があります。使用後は仕覆に包み、通気性のある桐箱で保管。漆面の埃は柔らかい布で優しく払い、研磨剤やアルコール類は厳禁です。
中棗・即中斎書付は、茶道具としての実用性と、家元の書付による来歴証明が融合した希少価値の高い骨董品です。真贋鑑定では書付・印章・箱仕覆・漆面や蒔絵の質感を総合的に判断し、取引やコレクションの際には信頼できる専門家へ鑑定を依頼することをおすすめします。
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