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根付(ねつけ)は、江戸時代に帯に差した小物をつり下げる留め具として誕生した装身具で、端正な彫刻や素材の美しさを楽しむ工芸品です。一式とは主に根付本体、笄(こうがい)や印籠と組み合わせた組物を指し、素材・技法・意匠の多様性が魅力となります。骨董品としては作家銘、素材の希少性、彫刻技術、保存状態、来歴・箱書きが評価要素です。
根付は室町後期から使用が始まり、帯が狭い江戸時代に携帯品を収納・装飾する実用品から装身具へと進化。彫刻技術の向上とともに、象牙・角・鼈甲など高級素材に小動物や美人図、故事文を彫る逸品が生まれ、茶人や町人の洒落心を満たしました。
主素材は本象牙、角材、黒檀、檜、朱泥、珊瑚、螺鈿、金銀象嵌など。象牙は緻密な木理を活かし、彫刻刀と細刀で肉彫り、浮彫、透かし彫りの技を駆使。木製は漆塗りや蒔絵と組み合わせ、金属製は釜地に鍍金・彫金を施す例もあります。表現の幅を広げる技法と素材の組み合わせが、根付の美を支えます。
題材は動植物、歴史人物、妖怪、吉祥文、日常風景など多彩。小さな空間に物語性を凝縮し、背面にも細部を施す「両面彫刻」や、孔雀の羽根を意図した透かし彫り、螺鈿を埋め込んだ装飾が見どころ。組物では、印籠の縁金具や笄と対になる意匠構成が意識されます。
共箱、仕覆、箱書き筆者の署名、旧蔵家記録、展覧会図録掲載履歴などの来歴資料は、真贋判定と評価の要件。特に名工作例や人間国宝級彫師の作品は、書付や鑑定書が揃うと価値が飛躍的に向上します。
無銘木製根付は2万~5万円、象牙や鼈甲の小彫根付は10万~30万円、有銘作家物や複雑透かし文の逸品は50万~200万円、人間国宝級は300万~500万円以上の評価例があります。組物として印籠・笄を含めるとさらにプレミアムが加わります。
有機素材は乾燥ひび割れ、虫害を防ぐため、湿度50~60%、室温20℃前後の安定環境で保管。埃は柔らかな筆で軽く払い、化学薬品やオイル類は避け、必要に応じ専門家によるクリーニング・修復と、元箱・仕覆で衝撃から保護します。
根付一式は、素材・技法・意匠・作家銘・保存状態・来歴資料の六要素が揃うことで骨董的価値を発揮します。小さな工芸品に凝縮された物語性と技術の粋は、彫刻愛好家や骨董コレクター、日本文化研究者から今後も高い評価を受け続けることでしょう。
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