Menu
本作品は、楽吉左衛門家第12代覚入(かくにゅう)による赤茶碗で、銘「長生(ちょうせい)」と号し、裏千家14代即中斎宗匠(そくちゅうさい)の書付がある共箱付きの逸品です。温かみのある朱泥釉が器面を覆い、赤褐色の色調と素朴な手触りが特徴。茶碗の外形はφ12cm前後の小ぶりな立ち上がり形で、掌に収まりやすく、茶席での取り回しが良い設計です。
楽吉左衛門家は16世紀後半の初代長次郎に始まる楽焼の名門。覚入は12代を継承し、昭和期より赤楽の釉の深みと造形の可能性を探求して名声を築きました。独自の釉調コントロールと器形の造形美が評価され、京の茶人・煎茶家からも支持を得ています。
赤茶碗は朱泥土を用い、酸化焼成によって発色させる楽焼釉です。覚入の赤釉は、還元気味の還元焔と酸化焔を繰り返す「重焼成」によって深い朱色から黒紫まで多彩に変化。釉面には細かな貫入が入って飴色の艶を帯び、経年と使用を経るごとに味わいが増します。
銘「長生」は、長寿や繁栄を願う吉祥の意を込めたもので、茶碗銘としては珍しく抑制の効いた雅趣を醸し出します。銘は器底に刻まれ、掌を返す際に覗く風流さが茶席の演出効果を高めます。
裏千家14代即中斎宗匠の書付は、家元の書による品質保証とも言え、共箱の蓋裏に墨書されています。「長生」銘と宗匠の署名は由緒を示す最上の証拠で、共箱と合わせて茶道具としての格を大いに高めます。
楽茶碗は急激な温度変化に弱いため、冷たい茶碗に熱湯を注がないこと。使用後は茶渋を残しつつ乾拭きし、直射日光や乾燥を避けて箱に収めて保管します。貫入の奥に汚れが溜まりやすいので、柔らかな布で時折拭き取ると良好に保てます。
楽吉左衛門覚入作赤茶碗「長生」即中斎書付は、12代覚入の技と家元書付による由緒が融合した骨董的価値の高い逸品です。共箱の揃い、釉調、器形、銘、来歴の五要素が揃うことでコレクション価値が最大化し、今後も茶道具市場で高い評価を維持し続けることでしょう。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。