九谷焼徳利一対 買取実績

概要

九谷焼徳利一対は、石川県能美市九谷地域で製作される伝統的な磁器製酒器のうち、対（つい）として揃えられた二点セットです。色絵七宝、赤絵金彩、青手磁器など多彩なカラーバリエーションと豪華な装飾が特徴で、煎茶席のみならず日本酒器としても重用されます。骨董的には、作家・窯元銘、絵付技法、造形バランス、火襷・金彩の状態、保存状態、来歴資料の六要素が評価の鍵となります。

歴史的背景

九谷焼は江戸時代中期（17世紀末）に加賀藩の保護のもと創始され、明治以降に色絵磁器として大きく発展しました。特に赤絵七宝手や古九谷写しといった絵付技法は、輸出需要を意識した豪華絢爛な装飾様式として国内外で人気を博しました。徳利の対は、酒席の格式を示す調度品として、また贈答用贈り物として用いられました。

素材と製作技法

胎土には有田系の高品質瓷石土を用い、轆轤または型押しで成形。素焼き後に透明釉を施し、本焼成（約1,280℃）を経て堅牢な磁器地となります。絵付は赤絵七宝、青手、金彩などがあり、それぞれ顔料と金粉を調合した上絵付絵具を筆で描画し、二度焼成で定着させます。赤絵七宝は瑠璃・黄・緑・紫・赤を七宝文様のように配し、金彩の縁取りで華やかに引き締めます。

造形と意匠

徳利の形は、肩張り胴部からくびれ、細めの高口縁へと流れる流線型が基本。寸胴形や胴締まり形、丸形などサイズやフォルムにバリエーションがあります。一対揃うことで左右対称の美が強調され、酒席や飾り棚での見映えが一層高まります。絵付図柄は、牡丹、唐草、鳳凰、松竹梅など吉祥文が多用され、繁栄や長寿を願う意味が込められます。

骨董的評価ポイント

• 窯元銘・作家銘：底部の「九谷」「製造元」「作家名」刻印や手書き款識の有無と鮮明度


• 絵付技術：赤絵七宝の色彩の鮮やかさと階調、筆致の正確さ、金彩の亀裂や剥落の有無


• 磁胎の質：胎土の緻密さ、釉下貫入の入り具合、素地の白さ


• 造形バランス：高さと胴径の比率、口縁の切れ、底部の安定感


• 保存状態：チップ・ヒビ・補修痕、釉面のヨゴレ詰まり、金彩の摩耗


• 来歴資料：共箱、外箱、箱書き、購入証明、旧蔵家記録などの付属

市場価格の目安

無銘量産九谷焼徳利一対は10万～30万円程度が相場ですが、赤絵七宝や金彩の優品、共箱付き作家物は50万～100万円、著名作家や希少図柄の対は150万～300万円になる場合もあります。来歴資料が揃うものは相場の1.5倍以上の評価を得ることがあります。

保存管理と取り扱い

高温高温差に弱いため、急激な温度変化を避け、使用後は中性洗剤で手洗いし、柔らかな布で水気を拭き取ります。乾燥後は共箱に納め、湿度50～60％・室温20℃前後の安定環境で保管してください。金彩部分は強く擦らず、汚れは極細筆で払うようにすると金彩の劣化を防げます。

まとめ

九谷焼徳利一対は、窯元銘・絵付技法・磁胎・造形・保存状態・来歴資料の六要素が揃うことで骨董的価値を最大化します。豪華な色絵と精緻な造形が魅力の逸品として、酒席やインテリアを彩るだけでなく、コレクションや投資対象としても高い評価を受け続けることでしょう。