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作家物の銀盆は、純銀またはシルバー合金を素材に、個々の作家が手仕事で成形・彫刻・装飾を施した盆(トレイ)です。実用としては茶道具や香道具の供出、洋風ではティーサービスや装飾陳列に用いられますが、作家の意匠性が強い一点物は工芸品・骨董としての収集価値も高いです。
銀盆の素材は純銀(Ag)やスターリングシルバー(銀925)が中心で、打ち出し(鍛金)、鋳造、引き伸ばし、彫金、象嵌、透かし(オープーワーク)など複数技法が組み合わされます。鎚目(ハンマード)仕上げや chased(彫金)によるレリーフ、透かしとバックプレートの二重構成など、作家独自の手仕事痕が評価の重要ポイントです。
作家物はデザインに作家の美学や時代精神が色濃く表れます。アール・ヌーヴォー調の有機的曲線、モダンなミニマリズム、和銀細工の彫金文様など多様。皿面の彫り跡、縁の仕上げ、裏面の刻印やサインが作家の「筆跡」に相当し、真贋判定と価格決定に直結します。
銀製品は底面に純度表示(例:SILVER、STERLING、Ag925、純銀など)やメーカーマーク、作家印が打たれていることが多く、これらは真贋・出自の重要な手がかりです。作家のフルネームやアトリエ刻印、ホールマークリストと照合できれば市場評価は大きく上がります。
銀は硫化で黒変(いぶし)しやすく、経年で得られる薄い銀化やパティナは品位の一部とされます。一方で深い腐食、穴あき、過度の研磨痕、修理(はんだ付けなど)は価値を下げます。鑑定時は表面の黒変の自然さ、彫金線のエッジの残り具合、裏面の補修痕の有無を必ず確認してください。
真作判定では(1)刻印とその字体・位置、(2)打出しや彫金の刀痕の自然な揺らぎ、(3)銀の比重検査や磁性テスト(非磁性が本銀の目安)、(4)裏面の接合仕上げやロウ付け痕を詳細にチェックします。作家物は稀に作家サインの偽刻があるため、来歴書類や購入証明の有無も重視されます。
価格は作家の評価、技法の希少性、サイズ、保存状態、来歴で大きく変動します。無銘・小型の現代作家物は数万円〜数十万円、著名作家や歴史的作例は百万円以上になることもあります。共箱や作家の展覧記録が揃うと評価は飛躍的に上がります。
銀盆は硫化防止のため密閉袋に銀布や防湿剤とともに保管し、使用後は柔らかい布で指紋や汚れを拭き取ります。黒変が好ましい場合は研磨を控え、軽度の汚れは中性洗剤で手洗いして素早く乾燥させてください。強い研磨剤や酸性洗浄は彫金を痛めます。
照明は拡散光で銀の艶と彫金の影をやわらかく見せるのが良く、鏡面の反射を避けるため角度を調整して撮影・展示します。皿面の細部や裏面刻印は拡大写真で記録し、来歴情報と合わせて保管すると将来の評価・売買に有利です。
作家物の銀盆は、素材の純度・技法・作家印・経年のパティナ・来歴が総合的に価値を決める複合骨董です。査定や保存、売買の際は刻印や作家署名の照合、表裏の手仕事痕の観察、修復履歴の開示を重視し、必要に応じて専門家鑑定を受けることをおすすめします。
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