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青磁香炉は、青緑色の釉色(青磁)で覆われた香炉で、香道・茶道・仏具・室内飾りとして用いられます。青磁特有の穏やかな色調と柔らかな釉面の光沢が香炉の凛とした佇まいを引き立て、実用性と美術性を兼ね備えた骨董品として高く評価されます。
青磁は中国・古代の越窯や龍泉窯(Longquan)が代表的産地で、宋代以降に完成した澄んだ青磁釉が名高いです。日本へは遣唐使や禅僧を通じて伝来し、室町期以降に茶道や禅の空間で用いられました。朝鮮や日本でも独自の青磁が制作され、各地窯の様式差が鑑賞上の魅力となります。
香炉形状は蓋付香炉、三足香炉、炉縁用の平香炉、透かし香炉など多様です。胴の丸みや高台の処理、蓋摘みの意匠(獅子摘み・宝珠摘み等)が作期・産地・用途を示します。表面には刻文・印花・透かし彫りが施されることがあり、文様は蓮華・雲龍・吉祥文が多用されます。
青磁香炉の魅力は釉色の深みと氷裂(貫入)の景色です。龍泉系の青磁は透明感のある青緑で、窯変による釉色の濃淡や貫入の入り方が独特の風情を作ります。釉裏の鉄粉や灰の沈着、胎土と釉の境界に現れる「釉際」の景色も重要な鑑賞要素です。
鑑定では胎土(磁胎)の状態、釉層の厚みと緻密さ、貫入の自然さ、窯変の出方、底部の削りや高台の処理を詳細に観察します。古作は高台削りの荒れや釉の擦れ、長年の煤や香灰の堆積が自然に見られる一方、近年の模造品は釉が均一で人工的な箇所が目立ちます。底面や高台内に窯印・銘がある場合は来歴確認の重要資料です。
香炉内部の灰の付着痕や蓋縁の煤け、外面の磨耗は使用の実証であり来歴を裏付けます。修補や金継ぎの有無、後補蓋の有無は評価に影響します。共箱・古箱書・旧蔵者記録が揃うと市場価値が大きく上がります。
青磁香炉の価格は産地・時代・状態・来歴で幅があります。中国宋・元の古青磁級は非常に高価で数百万円〜数千万円に至ることもありますが、近世や朝鮮・日本製の良品は十万〜数百万円が一般的相場。共箱や来歴が整った作家物はさらに高値となります。
青磁は急激な温湿度変化や衝撃に弱く、金継ぎ痕や貫入の汚染を避けるため取り扱いは丁寧に行ってください。埃は柔らかな刷毛や布で払う程度に留め、香灰は乾いた状態で優しく除去。洗浄は中性洗剤の薄め液を用い、強い摩擦や漂白剤は厳禁です。
展示は間接光を用い、釉色の微妙な濃淡や貫入の網目を見せる角度で配置します。香炉として使用する場合は、炉縁や花台、茶棚との調和を考え、周囲に無地の背景を用いると釉の色味が際立ちます。
査定時は(1)底部高台の写真、(2)内部の香灰痕、(3)窯印や落款の有無、(4)共箱・箱書・来歴情報、(5)亀裂・欠け・修復の有無をまとめて提示すると評価が高まります。専門店での鑑定書や修復履歴の記録を用意することも有利です。
青磁香炉は釉景・造形・来歴が価値を決める総合骨董品です。胎土・釉調・貫入・窯変・使用痕を総合的に観察し、適切な保存と記録を行うことで、その芸術的・歴史的価値を次世代へ伝えてゆけます。
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