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朱泥(しゅでい)水注ぎは、煎茶道具の一種で朱色を帯びた紫砂(宜興・中国産の朱泥系土)や日本の赤土を用いて作られた小型の水差し(みずさし)です。煎茶席での湯冷ましや茶器の湯濯ぎ、小皿への水注ぎなど実用的役割を持ちながら、土味や釉調、造形の美しさから骨董品としても評価されます。
朱泥系土は中国・宜興の朱泥壺に由来する風合いをもつ土で、煎茶の流行とともに明治以降に日本でも愛用されました。煎茶席では急須(朱泥急須)と併用され、湯の温度調節や茶器の湿し、香合や菓子器へ少量の水を注ぐなど多様な用途で用いられます。
朱泥水注ぎは朱泥系の赤い粘土を轆轤成形または型成形し、素焼後に低〜中温で還元焼成または酸化焼成されます。素地表面は緻密で吸水性が少なく、釉薬をかけない素地仕上げのものも多く、土そのものの色味と焼き締まりが鑑賞ポイントです。
形は小壺形のものから片口状・肩張り型・細頸瓶型、注口の付いた注器など多彩です。口縁の作り・注ぎ口の切り方、把手(取っ手)の有無、胴部の鎬(しのぎ)や刻文などが作家性を示します。朱泥の素地色を活かした彫文や印花(いんか)を配した意匠が人気です。
中国宜興由来の朱泥系は世界的に知られ、日本国内では有田・萩などの陶地や近現代の作家が朱泥風の水注ぎを制作しました。作家落款・窯印がある器は骨董価値が高く、箱書や来歴が揃うと査定評価が上がります。
鑑定では土味(粒子感・赤味の深さ)、焼成痕(焼き締まり・窯変)、注口の切断面、底裏の轆轤痕・落款、素地の吸水性試験(ごく少量の水滴で観察)を確認します。後補や近年作は土味が均一で釉調が人工的、落款がプリントや浅彫りの傾向があるため注意が必要です。
朱泥は急激な温度変化や衝撃でヒビや欠けが生じやすいので、使用時は急激な熱湯注入を避け、取り扱いは慎重に。洗浄は中性洗剤で手洗いし、金属たわしや強い研磨剤は使わないでください。貯蔵は乾燥・直射日光を避け、衝撃に弱いので個別に緩衝材で包みましょう。
価格は作家・来歴・状態・造形の優劣で変わり、無銘の一般的な朱泥水注ぎは数千円〜数万円で取引されます。名作家作・箱書付・古作風の稀少品は数十万〜百万円台になることもあり、共箱や付属の鑑定書があると更に評価されます。
煎茶席で使う際は、注ぎ口の細さや注ぎの切れ(点滴にならないか)を確認してから使います。鑑賞時は光に透かして土色の濃淡や焼き締まりを観察し、口縁や注口の加工、底裏の轆轤跡に手仕事の痕跡を探すと趣が深まります。
朱泥の煎茶水注ぎは、素材そのものの色味と造形の機能美が魅力の煎茶道具です。骨董としては土味・焼成痕・落款・来歴・保存状態を総合的に鑑定することが重要で、適切に扱えば日常使いと収集の両方で長く楽しめる逸品です。
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