Menu
十二代酒井田柿右衛門作の磁器花瓶は、佐賀・有田を代表する柿右衛門様式の現代作家物で、古典的な柿右衛門色絵の美意識を受け継ぎつつ十二代ならではの造形・釉調を示す一点です。上絵の繊細さと白磁の品位、文様の構成が評価対象となる工芸・骨董品です。
柿右衛門様式は、乳白色に澄んだ磁胎(柿右衛門白)、柔らかな赤(柿色)や藍、黄、緑を抑えた色合いで絵付けする点が特徴です。絵柄は古典的に花鳥風月・吉祥文・唐草や人物などを用い、余白(間)を生かした優雅な構成が美学の核になっています。
十二代は伝承を守りつつ、花瓶のフォルムに現代的な感覚を導入することが多く、胴の張りや口縁の処理に独自の比例感覚が見られます。釉調の厚薄・釉流れの制御、上絵の重ねの技術で古典と現代の接点を作るのが作行きの特色です。
磁胎は高温焼成の白磁を用い、素地の透光性と肌理の緻密さが重要です。絵付は下絵描き→ろくろ成形→素焼き→釉掛け→高温本焼→上絵付(色絵)→低温焼成の工程を踏み、金彩や盛り上げ彩も併用されることがあります。
鑑定では(1)底部の落款や印章、(2)白磁の胎質と透光性、(3)上絵の筆致(筆線の始終・抑揚)、(4)色彩の層構成と金彩の定着、(5)共箱・箱書・作家署名の有無を確認します。十二代は署名や共箱を添えることが多く、来歴書類は重要な鑑定資料です。
買取・評価時はヒビ・ニュウ(貫入)・欠け・金彩剥落・胴部の修理痕を必ず確認します。保存は直射日光と急激な温湿度変化を避け、布団や無酸紙で包んで保管。クリーニングは柔らかな布で埃を払う程度に留め、洗剤や研磨剤は避けます。
価格は作品の出来(筆致の冴え・釉調の美しさ)、署名と共箱の有無、制作年(初期作は高評価傾向)、展示歴・展覧収録、来歴(著名コレクション出自)で大きく変動します。希少な意匠や大型の花瓶は特にコレクターに人気があります。
白磁の光沢と上絵の繊細さを活かすため、間接光で斜めから照らすと色の深みが際立ちます。生花を入れる際は水垢や金彩接触に注意し、花材との色調バランスを考慮すると器本来の美が引き立ちます。
十二代酒井田柿右衛門作の磁器花瓶は、伝統と作家個性が融合した現代の名作です。来歴・落款・共箱・保存状態・筆致の精緻さを総合的に評価することで真価が見えてきます。売買や鑑定の際は写真記録と来歴資料を整え、専門家の鑑定を併用することをおすすめします。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。