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「大明萬歴年製『五彩龍鳳紋急須』」は、明代後期の萬歴年間(1573–1620年)に景徳鎮窯で制作された磁製茶器です。素地に白磁胎を用い、五彩(赤・黄・緑・青・紫など五色)による龍と鳳凰の吉祥紋様を大胆に描画。胴部には龍が天に昇る姿、蓋・把手には鳳凰が羽を広げる意匠を配し、皇室御用や高級官僚を顧客とした上質な一品です。
萬歴期は明朝陶磁が最盛期を迎えた時代で、五彩技法は康熙・乾隆の青花磁器に先駆けて独自に発達しました。特に皇帝の年号を冠した年製款(ねんせいかん)は、朝廷の御用窯と密接な関係があったことを示します。当時の五彩龍鳳紋は、皇帝の権威象徴である龍と繁栄を表す鳳凰を組み合わせ、宮廷の昇進・長寿・繁栄を祈念する意匠でした。
本急須は胴部が鼓胴(こどう)形に張り、口縁が外反(そとはん)する典型的な宋代茶器のフォルムを踏襲。蓋は緩やかなドーム形で、摘みに蓮華座を模した透かし彫りを施します。持ち手と注ぎ口は一体的に成形され、茶湯の注ぎ味を重視した細口設計です。五彩の錆上彩(さびうわえざい)と呼ばれる技法で、顔料が盛り上がるように盛彩され、焼成後に鮮やかな発色が得られます。
胎土は景徳鎮特有の瓷石土を用い、高温還元焼成で緻密な素地を得ます。下絵付けとして五彩用の酸化金属顔料を施し、素焼き→下絵焼成→素焼成の三段階で焼成。顔料は釉中に浸透せず、釉上に彩りを残すため、乾燥と焼成温度管理が極めて厳密に求められます。龍鳳紋の細部は筆致の強弱で陰影を表現し、朱色・黄彩・緑彩・藍彩が重層的に美しく調和します。
清代乾隆や嘉慶期の五彩龍鳳急須と比べても萬歴期は希少で、保存良好・款識鮮明な本品は200万~500万円が相場。軽微なヒビやチップがある場合は100万~200万円、来歴不明・補修歴があるものは50万~100万円で取引されることがあります。
五彩磁器は顔料層が釉上にあるため、急激な温度変化や強い衝撃を避ける必要があります。洗浄は中性洗剤を使わず、柔らかな布で乾拭きのみ。展示・保管はUVカットガラスケース内が望ましく、湿度40~60%、温度20℃前後を維持してください。
大明萬歴年製「五彩龍鳳紋急須」は、萬歴期特有の年製款、五彩技法の発色美、龍鳳紋の意匠性、地肌の精緻さ、保存状態、来歴資料の六要素が揃うことで骨董的価値が飛躍的に高まります。茶席用や装飾品としてだけでなく、中国陶磁コレクションの最高峰として今後も高い評価を維持し続ける逸品です。
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