Menu
朱泥茶器は、中国・宜興(イーシン)窯で作られる紫砂(しさ)茶器の一種で、鉄分を多く含む黄土に酸化鉄を加えた赤褐色の素地が特徴です。中でも朱泥水注は、朱赤色の水注(湯さし)として茶席を彩り、茶湯の湯温保持と注ぎやすさを両立した実用品でありながら、茶器コレクターや骨董愛好家に高く評価される逸品です。
朱泥は清朝康熙年間(17世紀後半)に龍窯(ロングヤオ)で発達し、乾隆帝や文人墨客の愛玩を受けて普及しました。鉄分を含む朱泥は焼成中に独特の朱色に発色し、使用を重ねるほどに飴色の艶を増して風合いが深まります。朱泥水注はその釉調を最も美しく見せる茶器の代表格です。
原料は宜興周辺の黄土を主体とし、焙焼・粉砕・練り込みを数回繰り返して陶土を得ます。轆轤成形または手捻りで雛形を作り、素焼き→中絵→本焼成という工程を経ます。朱泥は高温焼成(約1,200~1,300℃)でしっかり焼き締まり、耐熱性と蓄熱性に優れた水注となります。
朱泥水注は、張りのある胴部と細い口縁を持つ典型的な鼓形や扁壷形などがあります。把手(把っ手)や注ぎ口は流れるような曲線を描き、茶湯の流れをコントロールしやすい設計です。蓋には小さな摘みを備え、湯滴返しや湯口のすり合わせ精度が高いほど注ぎの所作が美しく決まります。
伝統工法で作られた清代写しの朱泥水注は50万円~150万円、新作・近代作家物は10万円~50万円が相場。中国・宜興の名工作や作家印を持つ一点ものは200万円~500万円に達する場合があります。小さなチップや直し跡があると相場の半分以下に下落することもあります。
朱泥茶器は土味を活かすため、直火にかけても割れにくい特性がありますが、急冷・急熱を避け、自然冷却してから水洗いします。使用後は内外を完全に乾燥させ、埃を柔らかな布で拭き取り、直射日光・湿気を避けて保管してください。
朱泥は茶湯の油脂や香りを吸着しやすいため、茶葉の香味を楽しむには適度に茶渋を残すと風味が安定します。また、異なる茶葉での連続使用は避けることで、混合香が生じず、茶器の香りを保持できます。
朱泥水注は、朱泥釉の華やかな発色と素地の堅牢性を併せ持つ茶道具として、日本の茶湯文化と中国陶芸技術の融合を象徴します。色調、造形、作家印、保存状態、来歴の五要素が揃うことで骨董的価値が飛躍的に高まり、茶道具コレクターや陶芸愛好家から高い評価を受ける逸品です。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。