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古染付祥瑞香炉(こぞめつけしょうずいこうろ)は、17世紀中葉の清朝・順治年間(1644~1661)に中国江西省景徳鎮窯で焼成された初期青花香炉です。薄手の磁胎に呉須(ごす)と呼ばれるコバルト顔料で吉祥文様を施し、淡青色の釉調が雅趣を漂わせます。香炉としての機能だけでなく、茶室や書斎の調度品として室内に静謐な風情をもたらします。
祥瑞(しょうずい)とは順治帝の年号「祥和瑞兆」から名付けられた青花染付の様式で、藍色の濃淡で雲龍、瑞獣、唐草など吉祥図を大らかに描く点が特徴。明末清初の動乱期に宮廷需要を満たすため、景徳鎮の技術者が試行錯誤を重ねて生み出した造形美は、のちの中国青花や日本染付にも大きな影響を与えました。
本香炉は、三足の小型炉体を持ち、胴部には瑞雲に乗る龍や鳳凰、尾長鳥などが戯れる構図を配します。蓋部には透彫(すかしぼり)で八宝文や波文があしらわれ、蓋摘みは獅子頭形に成形。全体に貫入(かんにゅう)が細かく走り、長年の風化で淡い飴色を帯びることで深い趣を醸し出します。
胎土には陶石と長石をブレンドした磁胎が用いられ、轆轤成形後に素焼き。下絵付けの際は粗い筆で藍を大胆に濃淡付けし、透明釉を全体に掛けて高温(約1,300℃)で本焼成。還元焔下で釉薬中の鉄分が結晶化して貫入が生じ、青花の濃淡と相まって古染付独特の「時代景色」を形作ります。
順治期の古手祥瑞香炉で完全無傷・共箱・来歴明確な品は300万~800万円、軽微なヒビや小チップがあるものは150万~300万円、無銘・来歴不明の使用痕品は50万~150万円が目安となります。
青花磁器は貫入に汚れが入りやすいため、使用後は乾いた柔らかな布で優しく拭き、直射日光や高温多湿を避けた保管が望ましいです。展示時は埃を筆で払い、重ね置きや衝撃を防ぐため専用クッションやケース内での陳列を推奨します。
古染付祥瑞香炉は、順治年間の青花技術と宮廷文化が融合した希少な骨董品です。胎土・釉調・絵付け・貫入・来歴資料の五要素がそろうことで真の価値を発揮し、茶道・香道コレクターや美術館収蔵品としての需要が今後も高まる逸品と言えるでしょう。
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