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かんざし櫛一式は、日本女性の伝統的な髪飾りで、櫛(くし)と簪(かんざし)を組み合わせたセット品を指します。江戸時代から昭和初期にかけて、婚礼・舞踊・お茶席など格式ある場で用いられ、螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)、金銀象嵌など多彩な装飾技法で華麗に仕上げられました。髪形の流行や身分を写す鏡のように、伝統工芸と女性美の粋が結実した逸品として骨董市場で高い評価を得ています。
かんざし櫛は、平安期のかづら結いに起源をもち、室町・桃山期に女性の髪型が多様化する中で装飾性が高まりました。江戸時代には町人や武家の間で流行し、江戸後期には簪十種や花簪など様々な種類が登場。明治以降は洋髪の導入で衰退しますが、明治~大正期の写し品や作家物は装飾美の極致として再評価され、現代でも蒐集対象となっています。
櫛本体には象牙、鼈甲(べっこう)、木地、金属などが用いられます。象牙櫛は白い光沢と細かな彫刻が特長、鼈甲は天然の模様と透かし彫りが高級感を漂わせます。簪は真鍮や銀地に金蒔絵を施し、螺鈿で花鳥風月を描いたり、七宝象嵌で色ガラスを埋め込んだりする凝った装飾技法が見どころです。職人は下絵から金粉の蒔き付け、研ぎ出しまで数十工程を手作業で行い、研磨と仕上げに半年以上を費やすこともあります。
かんざし櫛一式の意匠は四季の草花や吉祥文、舞楽図など多彩。花簪は桜、菊、椿など季節感を表し、簪の先端に垂れ下がる下がり簪(さがりかんざし)は動きに合わせて輝きます。櫛は歯の幅や数、形状で用途が分かれ、重厚な目摺り櫛(めずりぐし)から、細歯の丁寧な目出し櫛(めだしぐし)まで用途や髪形に応じたバリエーションがあります。
江戸後期~明治期の純象牙・螺鈿蒔絵完全品は150万~300万円。鼈甲と金蒔絵の組み合わせは100万~200万円、木地製・小綺麗な写し品は30万~80万円が相場です。箱書きあり・作家銘入りの作家物はさらに20~30%高い価格がつきます。
象牙・鼈甲は乾燥に弱く、湿度40~60%、温度20℃前後を保つ環境で保管。直射日光を避け、ケース内に保湿シートを敷くと良いでしょう。漆や金粉部分は柔らかな綿手袋を着用して取り扱い、埃は筆で優しく払います。共箱に仕舞う際は酸化防止のため空気を遮断し、長期保存に備えます。
かんざし櫛一式は、日本の女性美と工芸技術の粋を結晶させた骨董品です。素材の質、装飾の精緻さ、保存状態、来歴資料、年代特定の五要素が揃うことで価値を最大化し、茶道や舞踊、装飾品コレクターから高い評価を得ています。優品は今後も需要と資産価値を保ち続けることでしょう。
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