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西岡小十(にしおか こじゅう、1945年生)は、現代唐津焼を代表する陶芸家の一人で、その作風は伝統的な唐津手の素朴さとモダンな感性を融合させたものとして高く評価されています。本稿では、彼が手がけた唐津茶碗について、骨董品としての視点からその歴史的背景・制作技法・意匠・評価ポイント・市場価値・保存管理までを詳述します。
西岡小十は京都府出身。京都市立美術大学卒業後、佐賀県唐津市に移住し、島根県の楽山窯で修行を積みました。1970年代から独自の視点で唐津焼の伝統を見つめ直し、素地に南蛮手や糸切り手を用いながらも、釉調の変化を重視した「窯変唐津」を確立。茶趣と生活美を調和させたその作風は、茶人のみならず現代陶芸ファンから幅広く支持されています。
唐津焼は、16世紀末に朝鮮半島から伝わった窯技術を起源とし、桃山時代の茶の湯文化とともに発展しました。素朴な土味を生かす南蛮手・絞り手・刷毛目などの技法が特徴で、庶民的な用の美を重んじるその精神は、現代においても根強い人気を誇ります。西岡の唐津茶碗は、こうした伝統に真正面から向き合いながら、新しい造形表現を追求した点に骨董品的意義があります。
西岡小十は、地元唐津市の山間から採取した陶土を精選後に練り込み、轆轤成形で茶碗形に仕上げます。高台削りや糸切りは手仕事で行い、素地の硬さと柔らかさをバランス良く表現。釉薬は鉄分を含む透明釉を厚めに掛け、酸化・還元を織り交ぜる窯変焼成で、青灰色から褐色、乳白色のグラデーションを自在に生み出します。焼成は還元焔で約1,280℃前後を維持し、窯内の炎の流れを読みながら作品を配置する職人技が光ります。
唐津茶碗としては口縁部をやや立ち上げ、内側を深めに張らせる事で飲みやすさと持ちやすさを両立。外側には糸切り手や刷毛跡を敢えて残し、作者の手跡を感じられる表情を残しています。釉渡りの濃淡は、光線の当たり具合で表情を変え、見る者に豊かな味わいを伝えます。高台は低めに削り込んで安定感を持たせながら、指跡をほどよく残し「手の跡」を大切にします。
西岡小十の唐津茶碗は、共箱・鑑定書・落款完備の状態良好品で50,000円~150,000円程度。市場での人気作や初期作は200,000円超となる例もあります。軽微なチップや貫入などがある場合は30,000円~80,000円、共箱欠や来歴不明の場合は20,000円前後で取引される場合もあります。
唐津茶碗は急激な温度変化や直火を避け、使用後は自然乾燥させてから収納します。共箱には緩衝材を敷き、重ね置きを避けて保管。高温多湿を避け、展示時は直射日光を当てないよう配慮し、柔らかな布で軽く拭き取る程度のメンテナンスを心掛けると長期保存に適します。
西岡小十の唐津茶碗は、伝統的唐津焼の精神を受け継ぎつつ、作者独自の窯変表現と造形美を追求した現代の名作です。作者銘、釉調、手跡、保存状態、来歴資料の五要素が揃うことで骨董的価値が最大化し、茶道具コレクターや現代陶芸ファンから高く評価され続ける逸品と言えるでしょう。
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