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青磁硯屏(せいじけんびょう)は、文房四宝の一つ「硯」を屏風状に立てるための陶磁器製の台座または風除け板で、硯の墨飛散や風による墨の乾燥を防ぐ実用具です。龍泉窯(りゅうせんよう)製の青磁硯屏は、薄胎で軽やか、乳白光を帯びる澄んだ青緑色が特徴で、書斎や文房に気品を添えます。
龍泉窯は中国浙江省龍泉(ロンチュアン)地域の古窯で、五代十国~宋代(10~13世紀)に青磁製造技術が確立しました。特に「粉青」「梅子青」と称される釉調は、宋代官窯に採用され、宮廷文化と深く結びつきました。その伝統は明清を経て現代に継承され、文房具用器にも応用されています。
胎土に鉄分を含む龍泉陶土を用い、轆轤または型押し成形後、素焼き、青磁釉掛け、再焼成の三段階工程を経ます。還元雰囲気が管轄する窯内温度や酸素濃度を厳密に調整し、釉薬中の鉄分が微結晶化して青磁独特の氷裂文(貫入)を生み出します。硯屏は薄手に挽かれ、光を透かす繊細さが求められます。
典型的な硯屏形状は、弧を描く半月形や長方形の屏風状。側面に小さな足を配して安定性を高め、背面には書家の名や詩句を落款として彫り入れる例もあります。彫文は控えめで、釉調の美しさを際立たせ、屏風の縁に金銀彩や鉄錆絵を施すバリエーションも見られます。
青磁は貫入部に汚れが入りやすいため、風通しの良い場所で保管し、直射日光・急激な温湿度変化を避けます。使用後は乾いた柔らかい布で優しく拭き、墨や汚れを残さないように心掛けます。重ね置きは避け、単独で展示・収納すると長期保存に適します。
宋~元代の古窯龍泉青磁硯屏は希少で数百万円~数千万円。明清期官窯写しや近現代の良品は50万円~200万円程度が相場です。共箱・書家款識完備のものは20~30%高く評価されます。
龍泉窯の青磁硯屏は、文房具としての実用性と青磁美術品としての鑑賞価値が融合した逸品です。釉調、胎土、形状、来歴の全てが揃うことで骨董的価値が高まり、書斎や居室の調度として時代を超えて愛され続けるでしょう。
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