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能面は日本の伝統芸能・能楽で用いられる顔面装飾品で、能楽師の演技に応じて人物や精神世界を表現します。木彫り能面は主に欅(けやき)や桐(きり)を素材に、顔の微妙な表情を彫り出し、漆や彩色で仕上げた工芸品です。骨董品としては、材料・技法・時代・来歴などが評価の要素となります。
能楽は室町時代に観阿弥・世阿弥によって創始され、能面も同時期から制作が始まりました。初期は素朴な面打ちでしたが、桃山〜江戸期には武家の文化援助を受け、名工による洗練された能面が多数生まれました。明治以降は劇場用製作のほか、鑑賞・コレクション対象として流通するようになりました。
能面は役柄によって「若女」「老女」「尉(じょう)」「増女(ぞうおんな)」「翁(おきな)」など約50種に分類されます。表情の彫りや目・口の形状でキャラクターを描き分け、面打ち師の個性や流派(京面・能登面・吉野面など)による様式差が見られます。
主材は堅く木目の美しい欅が好まれ、軽量で着用中の負担が少ない桐製も用いられます。原木を選定後、荒彫り→中彫り→仕上げ彫りの順で成形し、漆掻きや顔料彩色で肌理を整えます。仕上げに胡粉(ごふん)や煤(すす)を用いた拭き漆で陰影を演出します。
能面の表情は微妙な角度と陰影で決まるため、鏨(たがね)やナイフを使った面打ち技術が極めて高度です。目元の吊り上がり、眉間の深さ、頬の膨らみなどを入念に調整し、観客の視点や舞台照明に応じて生きた表情を生み出します。
古作・完全無傷・名匠作銘入りの能面は数百万円~千万円以上で取引されることがあります。江戸後期〜明治期作の良品は50万~200万円、近代作や無銘品は10万~50万円が相場です。
能面は木+漆+顔料で構成されるため、湿度40〜60%、直射日光忌避、急激な温湿度変化のない環境で保管します。展示は周期的に休ませ、持ち運びや着用時は手袋を用い、面裏の紐や紐孔の緩みを点検してください。
木彫り能面は能楽文化を象徴する工芸品であり、骨董的価値は時代、作者、材料、彫技、保存状態、来歴の全てが総合的に評価されます。特に古作かつ名匠作の完全品はコレクター市場で高額取引され、次世代へ伝えるべき重要な美術文化遺産と言えます。
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