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仏具朱塗丸厨子(しゅぬりまるずし)は、内部に仏像や経典を安置するための携帯可能な漆器製の厨子で、丸形の外観が特徴です。朱塗りを施すことで神聖さと格式を示し、寺院の常設厨子とは別に礼拝や法要で用いられることがありました。携帯性と装飾性を兼ね備えた骨董品として人気があります。
厨子は飛鳥・奈良時代の仏教伝来以降に生まれ、平安期に高級漆工が発展。丸厨子は室町時代には華やかな礼仏具として普及し、桃山期には豪華絢爛な蒔絵や金箔装飾が競われました。江戸期以降は仏壇内厨子としても使われ、寺院や坊主、上流武家の個人蔵にも伝来しています。
丸厨子の本体は檜や杉などの木地を組み上げ、下地に砥粉漆を数回重ねて平滑化。赤色を生む朱漆を数十度にわたり塗り重ね、乾燥・研ぎを繰り返すことで深みのある艶を得ます。蓋や柱には金泥や蒔絵を施し、漆膜を厚く仕上げるほど耐久性と美観が高まります。
丸厨子は円筒形の本体と蓋で構成され、内部に取り外し可能な須弥壇(しゅみだん)を備えるものもあります。蓋摘みは宝珠や八葉蓮華文、側面には龍虎文や波唐草文を蒔絵で描く設計が多く、側面金具や鋲(びょう)にも金銀象嵌が見られます。構造の精緻さが制作技量を物語ります。
江戸期~桃山期の完全丸厨子で、金蒔絵・金箔・古裂仕覆・共箱完備の極上品は300万円~600万円。状態良好だが共箱欠や小補修ありは150万円~300万円、江戸後期写し・装飾簡素な小型品は50万円~150万円が相場となります。
漆器は湿度変動や直射日光、乾燥に弱いため、保存は湿度50~60%、温度20℃前後で行います。展示は紫外線カットケース内が理想で、取り扱い時は手袋を着用し、漆面を傷つけないよう特に蓋の合口部分に注意してください。
仏具朱塗丸厨子は、漆工技法と仏教信仰の融合を示す高位な礼拝具です。朱塗りの深み、蒔絵・金箔装飾の完成度、構造の精緻さ、来歴資料の有無が骨董価値を左右し、極上品は茶席具や仏具コレクターから高い評価と需要を維持しています。
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