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清水卯一(しみず ういち、1905–1997)は、人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定された日本の陶芸家。三重県伊賀の陶土を駆使し、鉄釉や藁灰釉(わらばいゆう)による「焼き締め」技法を追求。力強い造形と深い釉調を特徴とし、茶道具から花器まで幅広く制作した。
「鉄燿馬上盃(てつよう ばじょうはい)」は、細長い高台を備えた盃底から胴へ直線的に立ち上がる杯形の盃。外面には厚手の黒鉄釉を全体に掛けて焼成し、内面には鉄分の結晶が煌めく独特の「燿(よう)」が浮かび上がる。盃縁は薄く轆轤目を残し、握りやすさと視覚的軽快さを両立させている。
「ぐい呑み」は、口縁の薄さと底部の安定感を絶妙にコントロールした小型酒器。外面の鉄釉は鉄砂を含むマットな質感で、手のひらに収めたときの肌触りが抜群。内面にはわずかに還元焼成による虹色効果が現れ、飲み口を彩る。
卯一は、伊賀土と信楽土をブレンドした素地に、還元焔(えん)で鉄分を炭化還元させる鉄釉を厚掛け。1,300℃前後で複数回の焼成を行い、釉下で鉄分が結晶化して“燿”を生む。また、轆轤成形後の高台削りや手引きによる微調整は、彼の手業の妙が際立つ部分である。
馬上盃は、馬に跨ぐ武者の盃上(ばじょう)になぞらえた細長高台が最大の特徴。高台が杯身を宙に浮かせ、静謐な佇まいを生む。ぐい呑みは、口縁を薄く仕上げることで、酒の香りと味わいをストレートに伝える設計。いずれも茶席や酒席における儀式性を高め、使うほどに手に馴染む造形である。
完品共箱付の馬上盃は時価で200万円~400万円、ぐい呑みは100万円~200万円が相場。多少の使用痕や小チップがある場合は50万円~100万円程度で取引されることもある。流通量が限られるため、状態良好な初期作は高額落札が続く。
伊賀土特有の多孔質な素地は急激な温度変化に弱いため、熱いお湯を注ぐ際は予め温め、冷水で急冷しないこと。使用後は茶渋や酒渋を柔らかな布で優しく拭い、共箱に納めて湿度50%前後・直射日光を避けた環境で保管する。
人間国宝・清水卯一の「鉄燿馬上盃」と「ぐい呑み」は、伊賀と信楽の土を基盤に、鉄釉の結晶美と精緻な造形を両立させた逸品です。作家印の真贋、釉調の燿度、造形の健全性、保存状態、共箱の有無が価値を決定。骨董市場での人気は高く、今後も茶陶・酒器コレクションの最高峰として注目され続けるでしょう。
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