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「六朝造像記」は、中国南北朝時代(420~589年)の石刻碑文を拓本として紙に採取し、軸装した掛軸形式の書画資料です。もともとは石碑に刻された仏像や神像の由来・造像者名を記した文字列を写したもので、書道史・造像史の一次史料として、また拓本芸術としても高く評価されています。
六朝時代は東晋~南朝宋・斉・梁・陳の四王朝にあたり、仏教文化が栄えました。当時の石窟寺院や陵墓石刻において多くの造像記が作られ、その後の唐宋に再拓・遂拓されました。原刻の拓本は現地での初摺(原拓)とされ、宋代拓本は重要な学術資料として日本にも伝来しました。
拓本軸は、麻紙や宣紙を刻面に密着させて墨汁を擦り付け、刻文を転写する「拓法」で採取します。宋拓・明拓などの二次拓には風化痕や刻面の凹凸が墨痕として残り、紙の折り目や墨のにじみが拓師の手技を映し出します。軸装は裏打ち・表具裂地選定に優れた古裂を用い、書画軸としての格調を高めています。
評価は「原拓」か「再拓」かをまず見極め、原拓であれば最も高価です。拓紙の紙質(古宣紙か近代紙か)、墨痕の鮮明さ、折りや虫損の程度も重要です。加えて表装裂地の古裂、軸先の唐木や象牙、箱書き・共箱の有無が評価を左右し、完全な付属品を伴うものは骨董価値が飛躍的に上昇します。
来歴証明として箱書きや旧蔵印、展覧会図録への掲載記録があると真贋判定が容易になります。特に著名な書家や拓師が箱書きを行った伝来品は、「書跡名跡」の流れを正統に継ぐものとしてコレクターの垂涎の的です。また、古い蒐集家の目録や購買帳の記載は市場価値をさらに押し上げます。
拓本軸は墨と紙の経年劣化が進みやすいため、湿度50%前後・温度20℃前後の環境で保存します。直射日光やエアコン風を避け、展示期間は短くし、展示替え時に裏打ちの再補修や裏打ち替えを専門家に依頼すると長期保存に適します。
原拓六朝造像記軸(宋拓初摺・古裂表装・共箱付)は500万円~1,200万円、清代再拓(良好保存・箱書あり)は150万円~400万円、近代拓写(状態良好・共箱欠)は50万円~150万円が相場となります。来歴の明瞭な付属品完備品はさらにプレミアムが付きます。
中国拓本軸「六朝造像記」は、石刻造像記の学術資料性と拓本芸術の美を併せ持つ希少な骨董品です。原拓か再拓か、拓紙と墨の状態、表装・共箱など来歴証明の有無が価値を決定し、真作で良好保存のものは今後も高い需要と評価を維持し続けるでしょう。
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