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掛軸(かけじく)および書軸(しょじく)は、中国の帙装(ちつそう)を起源とし、日本には奈良・平安期に仏画や経典を掛ける装飾品として伝来しました。室町以降、絵画や書を軸装し、障子や柱間に掛けることで、空間に季節感や精神性を演出する美術工芸品として発展しました。
掛軸は〈本紙〉〈裏打ち紙〉〈中廻し〉〈表装裂地〉〈天・地〉〈天地軸棒〉〈風帯〉〈軸先〉から構成されます。本紙は絹本・紙本、裏打ちは麻紙や和紙、裂地には錦・綴錦・紗などが用いられ、軸先は唐木・竹・象牙など高級素材が選ばれます。
書軸には楷書・行書・草書・隷書・篆書があり、狩野派や土佐派の絵画と対をなす円山派・四条派の書画、また文人画家による文人書が骨董価値を高めます。流派や作者の筆致、筆順、墨色の濃淡が作品の真贋と格を見極める重要な手がかりとなります。
表装技法は本紙の裏打ちから始まり、桐箱への納めを考慮した折伏せ裏打ち、裂地の裁断、糊漉し、糸目打ち、仕上げの天地貼りなど多段階に及びます。裂地は本紙の絵柄や書風に合わせて色・文様を選び、全体の調和を図る職人技が評価されます。
掛軸は紙質のヤケ、虫損、裏打ちの剥がれ、裂地の退色や擦れが進行します。骨董品としては、絵・書の鮮明さを損なわない程度の自然な経年変化と、表装の補修痕が目立たないレベルが望ましく、適切な裏打ち替えや裂地の補強歴があるものは高評価です。
真贋鑑定では、款識(かんしき)や印章、箱書き、共箱の揃い、作者研究書や旧蔵家の来歴書類が重要です。書体や絵柄、裂地の時代考証、裏打ち紙の種類、表具の技法から制作年代を特定し、本紙と表装が同時期の一貫制作かを見極めます。
室町~桃山期の絵画掛軸や高僧の墨蹟は数百万円~数千万円、江戸中期の画僧・文人の書軸は100万円~500万円、明治以降の近代作家作品は50万円~200万円が相場です。完全無傷・来歴明確な共箱付はプレミア価格となります。
茶室や数寄屋の装飾、ホテル・料亭の演出、アートコレクションとしても掛軸・書軸は人気です。欧米やアジア各国の美術館・企業が浮世絵や狩野派をはじめとする日本美術に注目し、海外需要の高まりが骨董市場価格を押し上げています。
掛軸・書軸は日本の絵画・書道を空間に映し出す総合芸術品です。制作年代・作者、表装技法、保存状態、来歴資料の有無が価値を決定し、時代背景や流派を読み解くことで真贋・評価が可能となります。今後も文化財的価値を見直され、国内外コレクターから高い評価を受け続けるでしょう。
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