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「龍文堂造」は、江戸後期から明治期にかけて鋳物業で栄えた銘で、茶道具や鉄瓶をはじめ、花瓶・香炉・水注など多様な鉄製品に刻まれました。鋳型技術を駆使し、均一な打ち出し肌と緻密な意匠を実現した品質の高さから、龍文堂造の銘がある鋳物は高級品の証として流通しました。
創業は文政年間(1818〜1830年)頃とされ、当初は京都や大阪周辺で鋳物を制作。明治維新後は東京に工場を移し、西洋技術を取り入れた高品質な鋳物を生産。茶文化の隆盛とともに茶道具需要が高まる明治期に、龍文堂造の鉄瓶や茶注は庶民から大名家まで幅広く愛用されました。
龍文堂造の製品は、砂型鋳込みによる深肉鋳造(吹き砂鋳型)を得意とし、型から出した直後の「地肌」に美しい砂目が残ります。鋳肌は磨きをかけず、自然のままの粒状感を活かすことで、使用を重ねるほどに酸化皮膜(錆び)が飴化し、艶やかな飴色に変化します。
意匠は竜文・松竹梅・蔦文・亀甲文など吉祥文様を多用。摘みには蟹・蛇・獅子頭などをリアルに鋳出し、取手や注ぎ口にも龍や雲文を配した豪華な装飾が施されることがあります。一方で、実用性を重視したシンプルな地鉄仕上げの作品も存在し、両極のデザインがコレクターに支持されます。
鉄製品のため、湿気や塩分、直射日光を避けて保管します。使用後は水分を拭き取り、内側に少量の乾燥油を塗布して錆を防止。展示時は柔らかい布地を敷き、金属棚板との直接接触を避けることが長期保存に有効です。
龍文堂造の鋳物は、江戸から明治に続く日本鋳造技術の粋を示す逸品です。銘の有無、鋳肌の質、意匠の精緻さ、保存状態が価値を決定し、完全品・来歴明確品は茶道具・鑑賞具として高額取引されます。今後も骨董市場で注目され続ける、日本の伝統工芸品です。
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