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藤田喬平(ふじた きょうへい、1933~2004)は、日本を代表するガラス作家で、手吹きガラスの技巧を芸術の域に高めた先駆者です。彼が晩年に制作した手吹飾筥「日の出」は、その名の通り朝焼けの光を思わせる暖色のガラスが特徴で、現代ガラス工芸の逸品として高い評価を受けています。
藤田は東京芸術大学美術学部在学中からガラス制作に打ち込み、1960~70年代のヨーロッパ留学で西洋の手吹技法を吸収。帰国後は東京・多摩の工房で独自の釉調や色彩表現を追求し、造形豊かな作品群を展開しました。特に光を透過させる色の重ねや、ガラス表面のテクスチャーに工夫を凝らし、鑑賞者を惹きつける作風を確立しました。
手吹飾筥は、一枚のガラス塊を吹き竿で膨らませながら型で軽く整形し、手捻りで筥(はこ)状に仕上げる難易度の高い技法です。藤田は朱赤・橙・黄の3層ガラスを重ね、750~800℃の高温炉で緩やかに冷却することで、層間のグラデーションと内部の気泡が生まれるよう制御しました。これにより「日の出」の名にふさわしい朝陽のような輝きを実現しています。
直径約15cm、高さ約10cmの飾筥本体には、山並みや雲の意匠をシルエットで表現。ガラス内部の濁りと透明の対比が、朝靄に浮かぶ稜線のように見えます。口縁部は薄手に引き伸ばされ、光を透過する度合いが器底部より強く、静かながらダイナミックなフォルム美を生んでいます。
「日の出」は1995年前後の制作と考えられ、作家晩年の代表作群に属します。共箱には藤田の直筆銘と制作年が墨書され、内包された緩衝材にも手書きのサインがあります。初期の個人コレクションから発掘された来歴を持ち、2000年代以降に美術館で数度の個展に出品された記録が残っています。
藤田作品としての人気はここ十年でさらに高まり、飾筥「日の出」クラスは美術オークションやギャラリーで200万円~400万円が相場となっています。保存状態極上・共箱共布完備品では500万円超の落札例もあり、特に初期コレクション出品は希少性からプレミア価格がつくことがあります。
ガラス作品は急激な温度変化や衝撃に弱いため、展示時には飛散防止用のケースに収め、直射日光やUVカット照明下での展示が望ましいです。保管時は緩衝材入りの共箱に戻し、湿度40~60%、室温20℃前後を維持することでガラスの劣化や表面摩耗を防げます。
藤田喬平の手吹飾筥「日の出」は、手吹技法と独自の色彩構成を極めたガラス工芸の傑作です。作家直筆銘の共箱完備品は、来歴が明確であることで骨董的価値がさらに高まります。市場では高額取引が続き、今後も現代ガラス工芸の代表作として国内外コレクターから注目され続ける逸品です。
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