煎茶道具　赤絵人物急須 買取実績

概要

煎茶道具として用いられる赤絵人物急須は、江戸時代後期から明治時代にかけて国内外で高い評価を得た九谷焼・赤絵磁器のひとつです。特に急須形の小型ポットに、赤絵（赤色絵具）で人物や風景を描いた意匠は煎茶文化の嗜みと美術性を象徴し、骨董市場でも人気が高まっています。

歴史的背景

赤絵磁器の技法は有田・九谷を中心に発展し、赤絵具と金彩を多用した色絵技法として確立しました。煎茶道の普及に伴い、茶壺や煎茶瓶から急須に形を変え、使い勝手とデザイン性を両立させた赤絵人物急須が庶民から文人階級にまで広まりました。

赤絵人物急須の特徴

• 形状：胴径約8～10cmの程よい丸みを帯び、口縁は広めで持ち手が側面に付く典型的な急須形。


• 絵付け：人物（仕女、童子、文人など）を中心に、山水や家屋、花卉文が赤絵で描かれる。


• 色彩：赤絵の深みある朱色に加え、藍彩や金彩を併用し、豪華かつ繊細な表現。


• 刻印・款識：底部に窯印や作家名の落款が見られるものもあり、真贋判定の重要ポイント。

技法と制作地

赤絵人物急須は、素地成形後に還元焼成し、白磁地に乾式で赤絵具を絵付けし、さらに金彩や藍彩を重ねる二度焼き・三度焼き工程を経ます。有田・伊万里・薩摩・九谷など各地窯で特色ある絵付けが行われ、九谷は特に赤絵の発色と金彩の豪華さが際立ちます。

骨董市場における評価ポイント

• 年代・窯元：江戸期の古伊万里、有田藩窯、九谷の上絵窯作は高評価。


• 絵付けの完成度：筆遣いの精緻さ、赤絵の均一な発色、金彩の残存度。


• 保存状態：ヒビ・欠けの有無、金彩の剥落、カビや汚れの程度。


• 款識や落款：底部の銘、印章、赤印などが明瞭なものは価値が高まる。


• 共箱・共布：作家直筆の銘入り桐箱、収蔵箱付きは取引価格に大きく影響。

市場価格の目安

• 江戸期古伊万里赤絵人物急須（保存極上・共箱付き）：80万円～150万円


• 明治期以降の有田・九谷作（落款あり・状態良好）：30万円～80万円


• 無銘・小さな補修あり：10万円～30万円


• 使用感強め・箱なし：5万円～15万円

保存と取り扱い

磁器急須は温度変化や衝撃に弱いため、展示・保管はクッション材を敷いた安定した棚で行います。金彩部分には直接手で触れないよう手袋着用を推奨し、湿度40～60％、直射日光を避けた環境で保管することが長期的な保存につながります。

まとめ

煎茶道具としての実用性と赤絵人物急須ならではの美術性が融合した赤絵人物急須は、骨董市場で根強い人気を誇ります。年代や窯元、絵付けの技術、保存状態、来歴など多角的に評価され、優品は希少価値の高い逸品として高額取引されます。これからも煎茶文化と陶磁器美術を理解する上で重要なコレクションアイテムとなるでしょう。