Menu
14代酒井田柿右衛門(1913–1997)は、平成元年(1989)に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された日本を代表する磁器作家です。その代表的な作風の一つが「濁手(にごしで)」と呼ばれる乳濁釉(にゅうだくゆう)を用いた技法であり、本作「濁手朝顔文花瓶(にごしであさがおもんかびん)」は、透き通る白磁に僅かに乳濁した柔らかな色調と朝顔文の意匠を組み合わせた逸品です。
14代柿右衛門は先代の技術を継承しつつ、西洋の色絵技法を研究・応用しました。濁手は酸化スズを含む白濁釉を厚めに掛け、焼成後に得られる淡い乳白色が特徴です。さらに朝顔文は筆描きではなく型彫りを活かした転写技法と手描きを融合し、立体感と流麗さを併せ持つ表現を実現しています。
本花瓶は高さ約25cm、胴部に朝顔の大輪が三方向に展開し、葉の蔓が全体を優雅に巡ります。乳濁釉の厚みによって花弁の輪郭が柔らかく滲み、青系絵具の彩色は淡く控えめながら、光の当たり方で深みを増します。花瓶の口縁は薄手に仕上げられ、重心が低く安定感がある点も茶席や室内装飾に適しています。
14代柿右衛門の濁手作品は、人間国宝認定後急速に市場価格が高騰しました。濁手朝顔文花瓶は共箱・共布・栞が揃い、保存状態が極めて良好な場合、時価で300万円~600万円前後で取引されることが多いです。近年はオークション落札例も増え、コレクター間での人気が継続しています。
磁器は高温強度に優れますが、急激な温度変化や硬い衝撃に弱いため、展示時は直射日光を避け、湿度40~60%の環境で保管します。箱書きを守るように桐箱に収め、金属棚板や硬い台座との直接接触を避けることが長期保存の要です。
14代酒井田柿右衛門作「濁手朝顔文花瓶」は、人間国宝の気品と技術が結晶した現代九谷焼の名品です。濁手特有の柔らかな乳白釉と朝顔文の調和、共箱・共布の揃った完全品であれば、茶道具・美術品・資産として多角的に評価される逸品と言えます。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。