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屏風(びょうぶ)は、古代中国から伝来し、日本においては奈良時代から室内装飾や空間の仕切り、礼法の背景画などとして重要な役割を果たしてきました。平安貴族の御殿装飾から戦国・江戸の武家文化、明治以降の近代住宅に至るまで、屏風は日本の生活と美意識に深く根ざした存在です。中でも「時代屏風」と呼ばれるものは、歴史的な年代が判明する骨董品であり、美術品・歴史資料として極めて高い価値を持ちます。
「片双」とは、屏風の形式の一種で、本来は一対(双)の屏風のうち、片側(片)だけが残った状態を指します。本来の一双が揃っていれば理想ですが、数百年を経た現在においては、火災や戦乱、転売などの事情により片方のみ現存している例が多く、それでも希少性と歴史的背景から高く評価されることがあります。
屏風は、紙または絹本に描かれた画面を骨組みに貼り、折り畳めるようにした調度品です。木枠に細竹を入れて「骨」を作り、画面には金箔や銀箔、顔料が施され、縁(ふち)には布や漆の装飾が施されます。装飾性だけでなく、移動可能な家具としての機能性も重視されていました。
時代屏風に描かれる画題は多彩で、以下のようなテーマが見られます:
特に金地屏風(金箔を背景にした画面)は、豪華絢爛な美術品として江戸時代の大名や茶人に重宝されました。
桃山、江戸前期、中期、後期といった時代背景の判別は、描画技法や顔料の使用、金箔の貼り方、裏打ちの紙質などから専門家によって行われます。時代が古いほど評価は高くなります。
狩野派、土佐派、円山派など、流派や絵師の特定ができる場合、その作品は一層価値が上がります。無銘であっても筆致や構図、画風から流派の影響を読み取れる作品は、美術史的にも貴重です。
古い屏風であっても、絵具の剥落や紙の破れが少なく、補修が適切に行われていれば評価は高まります。一方で、過度な補彩や現代的な修復がなされていると、価値が下がることもあります。
縁の錦、金箔の質、丁番金具、裏貼りの文様なども、時代や格調を判断する重要な要素です。屏風そのものの仕立てが丁寧であるかも評価材料となります。
本来は一双の片方である「片双屏風」は、その片方が失われている点で減点要素となる場合もありますが、以下のような場合には高評価が維持されます:
特に茶道具や飾りとして使用する際は、片双であっても機能的価値が保たれるため、需要は十分に存在します。
時代屏風は、美術品としての収集対象であるだけでなく、料亭や茶室、ホテルのロビー、美術展での展示装飾としても活用されています。近年ではインバウンド需要の高まりにより、海外の収集家からも注目されています。保存には湿度管理と光の調整が必須で、専門的な取り扱いが求められます。
時代屏風の片双は、一対でないという点では減点要素となるものの、時代的価値や美術性、保存状態によっては依然として高く評価される骨董品です。日本の絵画史や工芸史を映す貴重な資料であり、その装飾性と歴史的背景は、現代の空間においても優れた存在感を発揮します。
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