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「唐物(からもの)」とは、元来は中国(唐代以降)の製品を指し、室町時代以降、日本に舶来した中国製の工芸品・美術品全般に対して用いられる呼称です。特に茶道や書院文化が発展した室町・桃山・江戸時代には、唐物は非常に高価で格式のある品として扱われ、唐物箪笥(からものたんす)もまた、貴族・武士・茶人・文化人の間で珍重されました。
「柴檀(さいたん/ズータン)」とは、インドや東南アジア原産の紫檀(したん)材を指し、硬質で深みのある赤褐色が特徴の高級木材です。中国では明・清代を通じて、紫檀は宮廷家具や文房具、仏具、武具などの素材として使用され、重厚で堅牢、美術的価値も兼ね備えた木工素材として最高級とされてきました。
柴檀箪笥は紫檀材を用いて作られた収納家具で、以下のような特徴を持ちます:
柴檀箪笥はもともと中国の文人や富裕層が書院や仏間に設置し、巻物や書画、香道具、文房具を収納するための家具でした。日本には江戸時代を中心に伝来し、「唐物箪笥」として茶道具や重要な文物を収めるための道具として尊ばれました。特に書院造りの空間との相性が良く、格式ある設えにおいて欠かせない存在でした。
柴檀箪笥の骨董的価値は、まず紫檀の質と量に大きく左右されます。全体が無垢材で構成されたもの、板厚が十分あり割れや反りが少ないものは評価が高くなります。また、指物(釘を使わない組み立て)や組手の丁寧さ、引き出しの収まりなど、伝統的な木工技術が反映されているかどうかも重要です。
柴檀箪笥には、獅子、龍、鳳凰、蓮、牡丹、如意頭などの吉祥文様が彫刻されることが多く、これらのデザインが細密で調和の取れたものであるかが美術的評価の分かれ目です。また、金具の素材や象嵌技術、丁番の構造も価値に直結します。
明〜清代初期の制作とされるものには、裏板や引き出しの内部、底面などに墨書や焼印が残っていることがあります。これらが制作年代や出自の特定材料となり、鑑定評価を大きく左右します。また、日本における旧家や寺院の伝来が明確な品は、その由緒により一層の価値が加味されます。
柴檀箪笥は中国古家具として国内外のコレクター、茶人、美術愛好家から高い関心を集めています。紫檀の価格高騰や伐採規制により、新たな製作が難しくなっていることから、骨董としての希少性と資産価値も上昇傾向にあります。保存には湿度・温度管理が欠かせず、直射日光や急激な乾燥を避けることが重要です。
唐物 柴檀箪笥は、素材の高級性、卓越した木工技術、そして中国伝統意匠の粋を集めた家具工芸の逸品です。家具でありながら芸術品でもあるその存在は、時代と文化を超えて人々を魅了し続けており、今後も美術市場で高い評価と需要が維持されることが予想されます。
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