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古伊万里の馬上盃(馬上杯)染付蓋物は、江戸時代に有田で焼かれた染付磁器の一形態で、盃や小形の蓋付き器に馬上や武具・勝負に関わる図像をあしらうことがある。藍一色の染付という技法は、筆致の勢いや余白の美を重んじる日本的表現と中国由来の技術が融合した点で評価される。
古伊万里染付は17世紀末〜18世紀に確立し、輸出用と国内用の双方で発展した。蓋物形式は携帯性や保存性に優れ、式の道具や贈答品にも用いられたため、用途と意匠が多様化したことが特徴である。
胎土は有田特有の白磁胎で、轆轤目や高台の仕上げ、施釉の厚みが鑑定のポイントとなる。染付はコバルト顔料による下絵付けで、焼成により青藍色が深まる。蓋と身の合口精度や蓋裏の仕上げも職人技の見せ場だ。
馬上図や騎乗者、武具、流麗な草花紋などが描かれる場合、図像は装飾性だけでなく使用場面や贈答の意図を示す。筆遣いや濃淡の処理、余白の取り方が作行きの良否を左右する。
鑑定では胎土の練り、胎の透光性、高台の削り跡、藍の発色とにじみ、高台裏の窯傷や墨書・印章を確認する。補修痕(接着・充填・補彩)は評価を下げるため、底面・合口周りを入念にチェックすること。
磁器は温度変化や衝撃に弱い。洗浄は中性洗剤で手洗いし、急熱変化を避ける。蓋と身を合わせたまま仕舞い、共箱や箱書があれば必ず保存する。貫入や釉の経年景は評価の一部となるが汚れは注意が必要。
価値は作年代・名窯の作行き・保存状態・図柄の希少性・来歴で決まる。無銘の実用品は比較的手頃だが、良好な保存状態で箱書や旧蔵が付く名品はコレクター価格となり得る。
査定・出品時は高解像度の画像(表裏・高台・合口・蓋内)と寸法、来歴を用意する。修復履歴は開示し、疑義があれば専門鑑定を依頼する。箱書や古写真があれば必ず添付すること。
染付の魅力は筆線のリズムと藍の濃淡にある。斜め光で筆致や釉景を観察し、蓋を外して内側の景色や高台裏の情報も確認すると真価が見えてくる。
古伊万里の馬上盃染付蓋物は、胎土・釉景・筆致・高台・来歴を総合して評価する総合骨董である。適切な保存と来歴の整備、専門家による実見で真贋と価値を明確にすることが重要だ。
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