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エミール・ガレ作の「木立・湖水風景文花器(高さ34.5cm)」は、ガレ工房を代表する風景図を被せガラスのカメオ技法で表現した作品群に当たります。被せ層の色彩と酸蝕(エッチング)による彫りで、木立や水面の光を詩的に描き出す点が特徴です。制作年代は主に19世紀末〜20世紀初頭(アール・ヌーヴォー期)に集中します。
判定では(1)被せガラスの層構成(複数色が重なるか)、(2)カメオ彫りの深さと段差、(3)酸蝕面のマット感や切削跡、(4)底部のポンティル痕や署名(“Gallé”の刻印や浮彫署名)を重点的に確認します。本物は層の断面に自然な色の連続性が見られ、署名は彫り込みや切り出しであることが多いです。
木立と湖水の風景は、ガレの植物・風景シリーズの一形態で、光線・反射・遠近をガラスの重ねと彫りで表現します。注目すべきは葉のレイヤー表現や水面のハイライトの処理で、斜め光を当てるとカメオの陰影が鮮やかに浮かび上がります。
近年は「ガレ風」模造や工房後刷りが多く流通します。偽作は署名が印刷調で浅く見えたり、被せ層が薄く段差が不自然だったり、酸蝕の均一さに機械的な癖が出ることがあるため、拡大観察と層断面の撮影が有効です。専門のレゾネ照合や博物館所蔵例との比較も推奨されます。
被せガラスは層間剥離、チップ、エナメルのクラックに弱いので、急激な温湿度変化や衝撃を避けてください。埃は柔らかい布や馬毛筆で軽く払うにとどめ、強い溶剤や研磨は表面を傷めます。展示は低照度・UVカットが望ましいです。
同種の湖水風景花器はオークションや専門ディーラーで流通実績があり、署名・良好保存・来歴が揃えば高値が期待できます。一方、サイズや色調、刷り(初刷り=良刷り)か否かで評価に大きな差が出ます。実際の落札例や販売例を参照して相場感を掴むことが重要です。
査定に出す際は全体写真(側面・正面)、底面の拡大、署名のクローズアップ、被せ層の斜め断面写真、来歴資料を用意してください。疑義がある場合はガラス工芸専門の鑑定士へ実見依頼し、必要ならレゾネ照合を行ってください。
エミール・ガレの木立湖水風景文花器(高さ34.5cm)は、被せガラスの色層とカメオ彫刻による繊細な光景表現が魅力の骨董品です。真贋判定は技法的痕跡(層構成・酸蝕・署名)と来歴の照合が鍵となり、適切な保存と専門鑑定が価値維持に直結します。
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