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朱根来(しゅねごろ)は、日本の伝統的な漆芸技法のひとつで、黒漆の上に朱漆を重ね塗りし、長年の使用による摩耗で朱と黒が美しく混ざり合うことで独特の風合いを生み出します。
今回の瓶子は、その朱と黒の調和が見事で、時代を経た本漆ならではの深みと、自然な経年美を備えた逸品でした。
瓶子(へいし)は古来、神仏への供物や式典に用いられた器であり、実用性とともに宗教的・文化的な象徴性を持つ器形です。
朱根来の魅力は、時間の経過とともに生まれる「景色」にあります。
塗り重ねられた朱漆が磨耗し、下地の黒漆が自然に現れることで、まるで絵画のような色彩の対比を見せます。
これは意図的な加工ではなく、長い年月にわたり使われ続けたことでしか得られない味わいであり、人工的には再現できない独自の美です。
そのため朱根来の漆器は、同じものが二つと存在しない“一期一会”の魅力を持っています。
今回の瓶子は、胴の張りと首の細さが絶妙で、全体のバランスに優れた見事な造形をしています。
塗りの厚みは均一で、光を受けると朱と黒が層のように重なって奥行きを感じさせます。
また、口縁や高台部分の摩耗具合が自然で、長年大切に扱われてきたことがうかがえました。
漆の艶も柔らかく、手に取ると心地よい温もりを感じるのが朱根来ならではの魅力です。
根来塗(ねごろぬり)は、紀州・根来寺の僧侶たちが日常の什器として用いた漆器に起源を持ちます。
堅牢な作りと簡素な美しさが特徴で、実用性と美観を兼ね備えた器として室町〜桃山期にかけて広まりました。
朱根来はその派生であり、朱漆と黒漆の自然な調和がより美術的に評価されるようになったことで、茶人や文人たちの間でも高く賞玩されました。
「朱の中に黒を見る」その侘びた美意識は、まさに日本独自の審美眼を象徴するものです。
朱根来瓶子の価値は、時代・造形・塗肌の状態・摩耗の自然さなど、多くの要素によって決まります。
以下のようなポイントが、骨董品としての評価基準となります。
今回の朱根来瓶子は、塗りの層が非常に自然で、摩耗部分の朱と黒の対比が美しく、時代を経た真の根来塗ならではの風格を感じさせました。
また、欠けや割れが見られず、全体のバランス・保存状態ともに良好で、漆器として極めて完成度の高い一品でした。
こうした状態の良い朱根来作品は近年市場でも注目されており、国内外のコレクターから高い需要があります。
今回お譲りいただいた「漆器 朱根来瓶子」は、長い年月を経てなお美しさを保つ、日本漆芸の粋を示す逸品でした。
朱漆と黒漆が織りなす深みのある表情は、まさに“時の美”そのものであり、古雅な風合いの中に確かな職人技が息づいています。
寿永堂では、このような根来塗・朱根来をはじめ、茶道具・煎茶道具・古漆器・仏具など、幅広い漆芸品の出張買取を承っております。
専門知識を持つ鑑定士が一点ずつ丁寧に査定し、時代・技法・保存状態を総合的に評価いたします。
朱根来や輪島塗、堆朱などの伝統漆器をお持ちの方は、ぜひ寿永堂へご相談ください。
大切なお品の真価を見極め、次代へと受け継ぐお手伝いをさせていただきます。
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