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アンティーク置時計とは、19世紀後半から20世紀前半にかけて製造された機械式の卓上時計を指します。素材には真鍮やブロンズ、木製ケースにガラス風防を組み合わせたものが多く、自動巻き前の手巻き式ムーブメントを搭載。趣あるデザインと精巧な機構から、インテリア性と工芸品としての美術的価値を兼ね備えた骨董品です。
置時計は懐中時計の普及後、室内装飾用タイムピースとしてヴィクトリア朝期にヨーロッパで流行しました。19世紀末にはフランスのベル・エポック様式、アメリカのアールデコ様式など地域ごとの様式が確立し、20世紀初頭には電気式や自動巻き式への移行期にあたります。この時代の置時計は、精度向上の試みと装飾美の融合が特徴です。
ムーブメントは手巻き式のレバー脱進機かガンギ車式脱進機を使用。時刻合わせは文字盤側または背面のキー穴に専用キーを差し込んで行い、ゼンマイの巻き上げは一日巻きから八日巻きまで様々。歯車の精度、脱進機の調整状態、振り子・テンプの整合性が動作精度に直結します。
ケースデザインは、ルイ16世様式のロココ装飾、アールヌーボーの曲線文様、アールデコの幾何学文様など多彩です。文字盤はエナメル焼き付けやシルバープレートにローマ数字・アラビア数字を組み合わせるものが一般的。針はブレゲ針や剣形など様式に合わせた意匠が施されます。
本体裏蓋の刻印(メーカー名、製造番号)、ムーブメントの刻印・刻みや金メッキの状態を確認します。ケース裏面や文字盤縁の補修痕、部品置換の有無をルーペで観察し、オリジナルパーツかを見極めます。文字盤の焼き直しや再塗装は価値を下げる要因となります。
フランスの〈ブランパン〉〈ジャガー・ルクルト〉、ドイツの〈グラスヒュッテ〉〈シュナイダー〉、アメリカの〈ウォルサム〉〈ハミルトン〉などが名高い。これらブランドは高精度ムーブメントと洗練されたケース装飾を両立させ、今日でも骨董市場で高い評価を受けています。
ブランド・稀少性・素材・保存状態によって価格は大きく変動します。無銘の小型置時計は数万円から入手可能ですが、有名メーカーの八日巻き大型ケースモデルは数十万〜百万円以上で取引されることもあります。パテック・フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンなど高級ブランドはさらに高額です。
機械式置時計は定期的なオーバーホールが不可欠です。ゼンマイ・歯車・脱進機への摩耗防止のため、5〜10年ごとの専門技師による分解洗浄と注油を推奨。ケースは乾いた布で埃を払い、金属部は専用研磨剤で優しく磨き、直射日光と高湿度を避けて保管します。
アンティーク置時計は、機械工芸と装飾美が融合した時代の証言であり、骨董品としての歴史的価値、インテリアとしての美術的価値を兼ね備えています。真贋鑑定、定期的な整備、適切な保存を行うことで、その魅力を末長く楽しむことができます。
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