Menu
ヘレンド(Herend)は1826年にハンガリーのヘレンド村で創業された王室御用達窯で、精緻な手描き彩色と金彩仕上げで名高い磁器ブランドです。シェル型コンポート(貝形高台皿)は、19世紀後半に欧米の貴族サロンやティーサービスで流行した意匠をヘレンド風にアレンジした器で、貝殻をかたどった縁取りと優雅な足元のデザインを特徴とします。
素地には高級白磁土を用い、鋳込成形で貝殻の凹凸や足元の曲線を精密に再現します。素焼後、本焼成→下絵付け→上絵付け→金彩→再焼成の多段階工程を経て仕上げられます。ヘレンド独自の彩色パターン(インドの華、ミルフルール等)を小筆で丁寧に描き込み、金装飾は24金パウダーを漆状定着剤で貼り付ける手法が使われます。
シェル型コンポートは、貝殻のフォルムを活かしたエレガントなエッジラインが魅力。中央に果実や菓子を乗せるくぼみを設け、足元はアカンサス葉や巻脚を模したデザインで支えます。カラーはベースの白磁地のほか、透明感あるブルーやロイヤルバリアントのピンク地に金彩を組み合わせたバリエーションがあります。
底面に刻印される「Herend Hungary」、「Handpainted」、「Original Herend Pattern」などの刻印がまず目安です。刻印の文字潰れやフォント違いは後補の疑い。彩色の筆跡は滑らかで、金彩のエッジも細かく均一。裏底・高台のカンナ削り痕や釉薬の残留、金彩の剥落具合が自然であることを確認します。
シェル型コンポートは、サイズや彩色パターン、金彩量、保存状態で価格が変動します。小型(直径20cm前後)は新品定価10万~20万円程度。アンティーク・ヴィンテージ品で共箱やオリジナルボックス付、使用感少ない完全品は30万~50万円、中~大型モデルや希少パターンは100万円前後の相場です。
磁器は硬い衝撃で欠けやヒビが入るため、取り扱いは慎重に。洗浄は中性洗剤を使い柔らかなスポンジで手洗いし、食器乾燥機は避けます。金彩部は研磨剤やクレンザーで擦らないようにし、直射日光を避けて湿度50%前後・温度20℃前後の安定環境で保管します。
ヘレンドの手描き彩色と金彩は一点ごと微妙に異なり、同じパターンでも個体差を楽しめるのが魅力です。シェル型コンポートは単体でテーブルセンターに置くほか、同柄のティーカップ&ソーサー、プレートと組み合わせてティーサービス全体をコーディネートできるため、コレクターやティータイム愛好家に人気です。
ヘレンドのシェル型コンポートは、伝統的なハンガリー磁器と欧米貴族文化が融合した逸品です。素材・製法・彩色・金彩・刻印・共箱を総合的に鑑定し、適切に手入れ・保存することで、その美術的価値と工芸的意義を末長く楽しむことができます。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。