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ポール・アイズピリ(Paul Aïzpiri, 1913–1987)は、フランスの画家・版画家で、特に植物や花をモチーフにした鮮やかな色彩と繊細なタッチで知られます。第二次世界大戦後、パリを拠点にリトグラフ技法と油彩画を並行して制作し、1960〜70年代に欧米各地で個展を開催しました。
アイズピリは石版リトグラフを主に用い、石板に直接クレヨンやグリースペンシルでドローイングした後、数回の色摺りを重ねて豊かなグラデーションを生み出します。花びらの微妙な色変化、葉脈の繊細な線描、背景への透明色のぼかしなど、版画としては高度な表現を可能にしています。
「花のリトグラフ」シリーズは、アイズピリ後期の代表作群で、バラ、ユリ、チューリップ、アネモネなど複数の花種を単独あるいは組み合わせで描いたリトグラフです。各版は限定部数50〜100部程度と少部数で制作され、作家自身による直筆サインとエディションナンバーが石版の余白に記されています。
多くは1965〜1975年にパリの〈モノクローム・エディション〉や〈アート・リト〉といったリトグラフ専門版元から刊行。初版は50部、再版を加えても100部に満たないため、版番号“24/50”など低ナンバーの保存状態良好なものは希少価値が高まります。
真作鑑定では、紙質(軽量なクリーム色リトグラフ紙)、印刷のエッジ(にじみやかすれのない鮮明さ)、顔料の層の厚みと光沢、サインの筆跡、エディションナンバーの筆跡を確認します。版画機械による偽作は線が均一で、サインがプリントになる場合が多い点に注意が必要です。
リトグラフは光に弱く、直射日光下での展示は顔料の退色や紙の黄変を招きます。UVカットガラスを用い、温度20℃前後・湿度50%前後の環境で額装またはマット裏打ちすることで、色彩と紙質を長期に保護できます。
優品の「花のリトグラフ」は、版数・保存状態・サインの明瞭さで価格が変動します。状態良好な初版低ナンバーは50,000〜150,000円、中古市場での一般的な相場は30,000〜70,000円程度です。希少な再販なしの初版完品は更に高値が期待できます。
アイズピリの花リトグラフは、一枚で色彩豊かな装飾性を楽しめるうえ、植物画としての学術的価値もあります。シリーズを揃えて並べると季節感や花種の違いが並木のように映え、インテリア性の高いコレクションが構築できます。
花のリトグラフは、マットの余白を生かしたシンプルな額装が作品の版画美を引き立てます。壁面の照明は間接光が望ましく、額縁の色調は絵の主色に合わせて白・黒・ナチュラルウッドなどを選ぶと調和します。
ポール・アイズピリの「花のリトグラフ」は、石版リトグラフ技法の精妙さと花モチーフの色彩美が融合した希少な版画作品です。紙質・印刷・サイン・版元・保存状態を総合的に鑑定し、適切に額装・保存管理することで、その芸術的価値と歴史的意義を末永く楽しむことができます。
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