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ルネ・ラリック(1860–1945)によって設立されたフランスの名門ガラス工房「ラリック(Lalique)」の花瓶は、アール・ヌーヴォーからアール・デコ期にかけてデザイン性と技術力を結集させたクリスタルガラス製品です。植物モチーフや女性像、幾何学文様をモールド成形・手仕上げし、艶消しマットと透明な光沢面を巧みに組み合わせることで豊かな陰影と触感を生み出します。骨董的評価は、デザイン、モデル名・番号、刻印、ガラス質、造形の完成度、保存状態、来歴資料の七要素で判断されます。
ラリックは1905年にガラス製造に進出し、香水瓶や装飾品で急速に評判を高めました。1910年代以降は花瓶や燭台など大型品に注力し、1920年代のアール・デコ期には直線と曲線美を融合させたモダンデザインが花開きました。世界大戦の影響を受けつつも、戦後まで高級クリスタル工芸のリーダーとして君臨しました。
ラリック花瓶の素材は高鉛含有クリスタルガラス。型吹きやプレス法で素形を成形し、モールド残りを研磨・カットで整えます。マット仕上げ面は酸蝕(エッチング)やサンドブラストでテクスチャーを与え、光沢面との対比により文様を浮かび上がらせます。最終的に職人によるハンドポリッシュでエッジを滑らかに整え、クリスタル特有の輝きを引き出します。
代表的モデルには「フローラ(Flora)」「マルリー(Marley)」「クレイヨン(Ceylon)」「ブランシュ(Blanche)」などがあります。フローラは草花を大胆に配置し、フォルムに沿って文様が流れる優雅さを表現。ブランシュは女性像の浮彫を全面に配し、絹のドレープを思わせる滑らかさと透過性が評価されます。各モデルには専用のシリアル番号が刻印され、生産年代やバリエーションが特定可能です。
1920–30年代のヴィンテージ花瓶は、保存良好・刻印完備で30万~80万円が一般相場。レアモデルや大型作品は100万~300万円以上に達することがあります。現行リミテッドエディション品は10万~30万円程度ですが、入手困難モデルは高額となります。
クリスタルガラスは衝撃に弱く、展示・保管時は布張り台やクッション材を使用。埃はマイクロファイバー布で軽く拭い、汚れがひどい場合は中性洗剤で手洗い後に透明布で乾拭き。直射日光は避け、湿度50%前後・室温20℃前後の環境で保管すると曇りや変色を抑制できます。
ラリック花瓶は、デザイン、モデル・刻印、ガラス質、造形、マット&光沢の対比、保存状態、来歴資料の七要素が揃うことで骨董的価値を最大化します。アール・ヌーヴォーからアール・デコを代表する工芸の粋を映す逸品として、ガラス工芸コレクターやインテリア愛好家から今後も高い評価を受け続けるでしょう。
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