中国古代の青銅器「盉（カ）」 買取実績

盉（カ）の概要

盉（へ、カ）は中国古代青銅器の一種で、主に殷・周時代（紀元前13世紀～前3世紀）に祭祀や祝宴の場で用いられた酒器です。器身が壷形で、口縁部に注ぎ口と把手が付き、底部は盛り上がった高台で支えられています。

歴史的背景と用途

殷周の青銅器文化は祖先崇拝や王権の象徴として発展し、盉は祖霊や天神への献酒に用いられました。儀式で酒を盛り、注ぎ酒を執り行う道具として、王侯・貴族の墳墓や祭壇から多く出土します。

形状と構造

盉は壷状胴に水平な口縁が付く双耳壷形が一般的。把手は円形の環耳か回転式の環把で、側面に2つ付くものが多いです。底部は隆帯（リング状の盛り上がり）や高台で浮かせ、安定させる構造を持ちます。

鋳造技法

青銅合金（銅・錫・鉛）を用いた夾砂鋳造（型に砂を混ぜる方法）や、失蜡鋳造法（蝋型を流し込む方法）が採用されました。鋳型継ぎ目の消し込みや鋳巣の処理、表面の研磨度合いが技術レベルを示します。

装飾文様と意匠

胴部には饕餮（とうてつ）文や雷紋、龍虎文などの浮彫帯文が巡らされます。文様は器の権威性を高めると同時に魔除けの意味も持ち、盉の格式と祭祀の荘厳さを演出します。

タイプ分類と諸様式

盉には口縁部の形状、把手の形状、文様帯の種類で多くの分類があり、殷代の饕餮紋盉、周代の細雷紋盉、戦国末期の簡素文盉など、時代変遷をたどることができます。

出土地と来歴

河南安陽殷墟、山西侯馬周墓、湖北随州楚墓など主要な出土地が知られています。出土地と一具一型の組み合わせは来歴証明として重要で、骨董市場における真贋鑑定の根拠となります。

真贋鑑定のポイント

真作は鋳型継ぎ目の自然な消し込み、鋳巣の偶発的配置、緑青の自然堆積、鋳肌の微細凹凸が特徴。後補品は鋳巣が均質、鋳肌が滑らかすぎる、緑青が人工的に塗布された痕跡があります。

市場価値と相場

殷代・周代の良質の盉は、保存状態・来歴・文様の鮮明さで価格が大きく変動し、数百万円～数千万円規模で取引されます。模造品や補修跡のあるものは価格が大幅に下がります。

保存・取扱いの注意点

青銅器は緑青の保護膜を尊重し、化学的洗浄や研磨を避けること。展示・保管は湿度40～60％の安定環境で行い、埃は柔らかな筆で優しく払うことが望まれます。

まとめ

盉は中国古代青銅文化の頂点を示す酒器であり、鋳造技法・文様・来歴・保存状態を総合的に鑑定することで、その歴史的・芸術的価値を見極めることができます。