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粉彩(ファミーユローズ)は、清朝乾隆期に景徳鎮で発達した色絵技法で、淡いピンクや緑、黄など多彩な顔料を二度焼成して鮮明な発色と繊細な絵付けを実現します。花卉や鳥獣、風景、人物画を器面全体に施した粉彩花瓶は、華やぎと優美さを兼ね備え、現在も世界中のコレクターや美術館で高い評価を受けています。
景徳鎮は中国江西省の磁器生産地で、良質な瓷土と高温還元焼成により薄手で光沢のある白磁を生み出します。粉彩技法ではまず釉下彩を一度焼成し、次に釉上彩を低温で重ね焼きする二段階工程を経るため、色の滲みや剥落が少なく、透明感ある彩色が特徴です。釉薬の艶と顔料の鮮やかさが立体的な奥行きを与えます。
本コレクションは三点の粉彩花瓶で構成されます。①乾隆期(1736~1795年)景徳鎮製の本格粉彩花瓶(高さ32cm・牡丹と蝶の図)。②光緒年間(1875~1908年)の写し粉彩花瓶(高さ30cm・蓮と鴛鴦の図)。③明治期輸出向け九谷風粉彩花瓶(高さ28cm・花鳥文)。いずれも共箱や作家印が付属し、来歴が明示されています。
粉彩花瓶の評価は、制作年代や窯印の有無、絵付け技術、釉調の均質性、保存状態によって左右されます。乾隆期作は薄胎で釉薬の艶が抜群、顔料の発色が鮮やかなら高額評価。光緒期写しは写実性や来歴書の有無が重要です。九谷風写しは彩色の均整と海外展示歴が価値の決め手となります。
市場相場は次の通りです。乾隆期景徳鎮製粉彩花瓶(保存極上・共箱付)800万円~1200万円、光緒期写し粉彩花瓶200万円~400万円、明治期輸出向け写し九谷風粉彩花瓶50万円~150万円。いずれも欠損や補修のない完全品が最高値を維持します。
粉彩花瓶は顔料が繊細なため、直射日光やエアコン風を避け、温度15~25℃、湿度40~60%を保持する環境で保管します。展示はUVカットケース内が望ましく、共箱や桐箱に戻して布包み保管。ホコリは柔らかい筆で払い、洗剤を用いず水拭きで優しく扱います。
中国景徳鎮製他三点の粉彩花瓶は、制作年代や技法の異なる三様の魅力を備えています。乾隆期の本作は学術的・美術的価値が極めて高く、光緒期写しは歴史資料としての意義を持ちます。九谷風輸出向け写し品も異文化交流史の証です。来歴や保存状態が担保されることで、骨董市場で将来的にも高い需要と評価が期待される逸品と言えるでしょう。
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