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中國朱泥急須(しゅできゅうす)は、紫砂壺(しさこ)の一種で、主に中国江蘇省宜興(イーシン)で産出される朱泥(赤軟泥)を素材にした急須です。朱色を帯びた土の素朴な風合いと、焼成により生まれるわずかな貫入(かんにゅう)が特徴で、茶器としてだけでなく骨董品としても高い評価を受けています。
朱泥急須は清朝乾隆~嘉慶(18世紀後期~19世紀初期)にかけて宜興紫砂窯で確立されました。当初は官窯向けの壺として制作され、やがて茶道具として輸出されるように。民間でも急須形が普及し、茶文化の広がりとともに各地の茶人や文人に愛好されました。
朱泥は粘性が高く、緻密で焼成時の収縮率が小さいため、薄手成形が可能です。急須本体は手捻りまたは轆轤(ろくろ)挽きで制作し、素焼き後に約1,100℃~1,200℃の還元焼成を行います。焼きあがると朱泥特有の透け感ある赤褐色が現れ、茶液がやわらかくまろやかになるといわれます。
宜興朱泥急須には「西施(せいし)」「仏手」「瓜棱(うりころう)」など古典的な型名があります。西施壺は曲線的な丸胴、仏手壺は摘みが蓮子形、瓜棱壺は胴にリブが入るスタイル。いずれも茶漉し孔や底網の精緻さ、把手と蓋の密合度が美的価値の要となります。
真作鑑定では、朱泥の色調や質感、貫入の自然さを観察。また、底部に刻まれる落款印章の書体や切り込み深さ、茶漉し網の打ち込み状態も重要です。偽物は土味が軽薄で、表面に人工的なムラが見られやすいので注意が必要です。
良品の乾隆期古作朱泥急須は、状態によって数十万円から数百万円で取引されることがあります。清代末~民国期の作品は比較的入手しやすく、数万円から十万円台が相場。作家物や銘款入りの逸品は、さらにプレミア価格となります。
朱泥急須は使い込むほどに油膜が入り、色艶が深まる「熟成」効果が楽しめる点が魅力です。美術的な造形美と実用性を兼ね備え、茶席で使うたびに味わいが増すため、茶人のみならず骨董コレクターからも根強い支持を受けています。
貫入に茶渋やカビが入り込むと劣化の原因となるため、使用後は熱湯で軽くすすぎ、布で水気を拭き取って十分に乾燥させます。直射日光や急激な温度変化を避け、桐箱や軟質緩衝材で包んで保管すると長期保存に適しています。
中國朱泥急須は、宜興紫砂の伝統と職人技が結晶した茶器兼骨董品です。素材・製法の特性、造形スタイル、鑑定ポイントを理解し、適切な保存管理を行うことで、その美しさと歴史的価値を長く楽しむことができます。
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