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天目茶碗(てんもくちゃわん)は、中国・建窯(福建省建陽)で南宋時代(12~13世紀)に生まれた黒釉陶器の茶碗で、黒褐色の釉面に「油滴」や「星点」と呼ばれる金銀色の斑紋が美しく浮かぶ点が最大の特徴です。名碗として日本の茶人に珍重され、茶道具の中でも最高峰の骨董品とされています。
建窯は官窯として宋朝に保護され、石質の緻密な土器を高温還元焼成する技術により、深い黒釉と斑紋が得られました。鎌倉時代中期には日本の商人や僧侶により宋銭と共に輸入され、特に禅宗寺院の茶席で用いられるようになりました。
代表的な天目には、「油滴天目」「曜変天目」「矢筈天目」「建窯天目」の系統があり、油滴は釉中の鉄分が結晶化した大小の点紋、曜変はさらに青白色の虹色斑が現れる希少種、矢筈は釉面の貫入に沿って細長い線状に斑が並ぶものです。
胎土は鉄分含有量の高い赤土で、轆轤成形の後、素焼き、黒釉掛け、本焼成の三段階を経ます。碗形は鎌倉〜南北朝期の写し品で小型かつ腰が張り、口縁がわずかに反り返る姿が特徴で、手に馴染む「手取り」の良さが高評価です。
真作判定では、斑紋の自然な不規則性、油滴の凹凸と周囲の虹彩、釉裏の貫入具合を観察。底部の高台削り跡、素地の赤味、窯変による釉厚ムラ、銘や箱書きの来歴証明が重要です。模造品は斑紋が均一すぎたり、貫入が浅い傾向にあります。
油滴天目は数百万円〜千万円超、曜変天目は国内外オークションで数千万円〜億円単位で取引される稀少品です。矢筈天目や建窯天目でも状態良好で来歴確かなものは数百万円が相場となります。
陶磁器は急激な温湿度変化に弱く、斑紋部の貫入に汚れが入りやすいため、使用後は柔らかな布でそっと拭き取り、長期保管は湿度50%前後・温度20℃前後の安定環境で行います。展示時はUVカットガラス越しの間接光が望ましいです。
茶碗を手に取ると、油滴や曜変の輝きが光を反射して揺らぎ、見込みの深い黒地と斑紋のコントラストが生き生きと浮かび上がります。茶席では白い抹茶の緑との対比が美しく、器の持つ侘び寂びを一層引き立てます。
天目茶碗は、中国古陶磁器の技術と美意識が結実した茶道具の最高峰です。釉調・斑紋・胎土・造形・来歴を総合的に鑑定し、適切に取り扱うことで、その歴史的・美術的価値を次世代へと継承できます。
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