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「葛明祥(かつめいしょう)海鼠絣(なまこゆう)花瓶」は、清朝乾隆・嘉慶年間(1736–1821)に宜興窯で制作された中国陶磁の逸品です。海鼠釉の深い青緑色と表面の浮き上がる斑文様が味わい深く、茶室調度や室内装飾として高い評価を得ています。
葛明祥は清代乾隆期から嘉慶期にかけて活躍した宜興窯の陶工で、3代にわたり同じ銘を継承しました。兄弟で窯を担い、伝統的な鈞窯釉に独自の改良を加え「海鼠釉」を創出。作品の多くは日本へ輸出され、中国国内には残存数が少ないため、希少性が高いとされます:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
海鼠釉は、コバルト系の青釉に銀白の還元結晶が浮かび上がる窯変釉です。高温還元焼成で釉中の鉄分が微細な結晶を生じ、海鼠(なまこ)の肌に似た凹凸と光沢を呈します。還元炎の流れや窯内位置で色調が変化し、ひとつとして同じ表情にならないのが魅力です:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
典型的な海鼠絣花瓶は、肩部がふっくらと張り、細長い頸部から広口へと開く柔らかなフォルムをもちます。胴部には釉薬の滴りや結晶の分布が均一に現れ、光の当たり方で濃淡が浮かび上がります。底部には「葛明祥造」または「葛明祥制」の刻印が残り、真贋の基準とされます:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
胎土には鉄分を含む宜興の陶土を使用し、轆轤または型押しで成形。素焼後にコバルト釉を厚く掛け、還元焔で約1,280℃前後の長時間焼成を行います。釉中の鉄分が還元される過程で結晶化し、厚みのある釉膜と貫入が重なって独特の「海鼠肌」を生み出します:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
順治・乾隆期の古手海鼠絣花瓶で無傷・共箱・来歴明確品は300万~800万円が相場。軽微なヒビや小チップありは150万~300万円、共箱欠・来歴不明の場合は50万~150万円程度で取引されることが多いです:contentReference[oaicite:4]{index=4}。
海鼠釉は貫入に汚れが入りやすいため、展示・保管は湿度50~60%、直射日光や急激な温度変化を避けます。使用後は柔らかな布で優しく拭き、埃や油脂を残さないようにし、重ね置きは避けて個別に緩衝材と共に保管してください。
葛明祥海鼠絣花瓶は、清代宜興窯の伝統技法と独自の窯変美が結晶した骨董品です。胎質・釉調・窯変・落款・保存状態・来歴の六要素が揃うことで、その真価が発揮され、茶道具コレクターや中国陶磁愛好家から今後も高い評価を受け続ける逸品です。
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