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二世秦蔵六造(はたぞうろく・にせい)は、明治から大正期にかけて京都で活躍した銀工芸家で、その細密な彫金と研ぎ出し技術で名を馳せました。本作は銀製の菓子器十客揃で、草花文や流水文を透彫・浮彫で表現したもので、茶席や宴席の干菓子器として用いられました。十客完全揃いな点が希少性を高め、骨董品市場でも高い評価を受けています。
初代秦蔵六の門下生として技を磨いた二世秦蔵六造は、京都美術工芸学校で西洋銀器技術を修得しつつ、京銀本来の和彫金技法を融合。帝国美術院展覧会などで複数回受賞し、銀細工の革新者として知られました。彼の作品は細部まで彫り残しと光沢の対比が美しく、近代銀器工芸の傑作と評されています。
一客につき直径約10㎝、高さ2㎝程度の平皿形。縁には唐草文の透かし彫りが施され、内面には流水に舞う桜や紅葉文が細密に彫り込まれています。裏面には「蔵六造」の銘が刻まれ、銀地の研磨跡が光を捉えて鮮やかに反射します。
素材は純銀(SILVER 950相当)が用いられ、伝統的な鍛金打出しで素地を成形。一次素打ち→彫金→透かし彫→研磨→化粧仕上げという工程を経ており、透かし彫部の縁取りの薄さと強度が同時に確保されています。最終的に硫化仕上げで黒色味を残し、研ぎ出しで銀の艶を浮き立たせます。
唐草や流水文は長寿・清浄を象徴し、干菓子との相性を考慮した意匠です。十客揃いは「十全十美」の吉祥を込めた景趣を演出。茶道具としてはもちろん、近代美術工芸品としても鑑賞価値が高く、展示用にも適します。
保存状態良好かつ十客完全揃いのものは200万~400万円が相場。小キズや軽微な硫化ムラあり品は100万~200万円、単客での欠品を伴う場合は1客あたり20万~40万円程度で取引されることがあります。来歴が明確な証明書付きはさらに高額となります。
銀製品は硫化による黒ずみを避けるため、乾燥した環境(湿度40~60%)で保管し、中性洗剤で手洗い後に柔らかな布で水分を拭き取ります。長期保管時は銀クロスや防硫シートとともに共箱へ収納し、直射日光や高温多湿を避けることが重要です。
二世秦蔵六造の銀製菓子器十客は、伝統的和彫金と近代銀器技法が融合した逸品です。作家銘、彫金技術、銀地の質、完全揃い、保存状態、来歴資料の六要素が揃うことで真の骨董的価値を発揮し、銀器コレクターや工芸愛好家から今後も高い評価を受け続けるでしょう。
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