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勲章は国家や皇室が功績を讃えて授与する装身具で、金属やエナメル、宝石などを用いた高度な工芸品です。日本の勲章制度は明治維新後に整備され、大勲章から褒章まで多彩な等級が存在し、公務員・学術・文化・産業など各分野の功労者に贈られてきました。
日本の勲章制度は1875年(明治8年)に大日本帝国憲法公布とともに創設され、第1回授与は1882年(明治15年)に行われました。欧米のナイト・オーダー制度を範としつつ、日本独自の家紋・桐紋意匠を取り入れて国威発揚を図りました。
代表的な勲章には「大勲位菊花章」「桐花大綬章」「旭日大綬章」「瑞宝章」などがあり、それぞれ金・銀・エナメルの仕様や帯章・リボンの色彩が定められています。褒章では緑綬褒章や黄綬褒章などがあります。
勲章本体は銀無垢鋳造または打ち出しを基本とし、金メッキ・金張りを施します。表面には透明エナメルや七宝を焼き付け、中央の家紋・国章はエンブレム彫金や象嵌で表現。帯章・リボンは絹織物を精緻に組み、裏打ちと縫製で耐久性を確保しています。
菊花章は皇室の象徴である菊花を、多重の花弁で荘厳に表し、旭日章は朝日を放射状の光線で示します。瑞宝章は宝珠と瑞雲を組み、学術・文化の栄光を象徴します。色彩や形状にはそれぞれ深い寓意が込められています。
真作判定では、金属鋳造痕の鋳巣や磨き跡、エナメルの焼き付き具合、象嵌線の細密さ、リボン裏の織り目や刻印「旭日」「瑞宝」などの打刻位置を厳密に照合します。贋作者はエナメルが厚すぎたり、リボンの色調や組織が現行品と異なる場合が多いです。
勲章は湿気と紫外線に弱く、エナメルや絹リボンの退色・劣化を防ぐため、湿度50%前後・温度20℃前後の環境で保管します。金属部分は専用布で軽く拭い、研磨剤は厳禁。リボンは酸化しやすいので、別収納か薄紙包みが推奨されます。
勲章の骨董価値は等級・年代・保存状態・来歴で大きく異なります。明治・大正期の初期刻印品は希少性から数十万~数百万円に達することがあります。昭和戦前期の品も年代背景により高値となり、来歴証明があるものは更に価格が上昇します。
勲章には授与状や箱、桐箱・布製ケースが付属することがあり、これらが揃っているかで真贋と価値が左右されます。授与状の墨書・印影、日付、官署の押印は来歴証明として重要な資料です。
複数の勲章を年代順や章別に並べることで、制度の変遷やデザインの流行を比較できるコレクションになります。展示はアクリルケース内で専用台座に取り付けるか、無酸素ケースでリボンを水平に保つ方法がおすすめです。
勲章は授与制度の歴史や国家儀礼、受章者の社会的背景を示す資料としても学術価値が高いです。官版資料や公文書と照合し、勲章発行の背景を追うことで、近代日本の国家形成史や功労者史の一端を知る手掛かりとなります。
勲章は金属工芸・七宝・染織が融合した高度工芸品であり、制度史と個別来歴が価値を左右する骨董品です。材質・技法・刻印・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切な環境で保管・展示することで、その歴史的・芸術的価値を永続的に伝承できます。
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