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十三代酒井田柿右衛門(さかいだかきえもん)による花瓶は、濁手(にごしで)や金彩薄墨手などの伝統技法を現代に受け継ぎつつ、独自の造形美を追求した逸品です。高さ30~40cm前後の堂々としたフォルムに、菊牡丹や蔓草、風神雷神文など京写しやオリジナル図柄が精緻に描かれ、茶席や室内装飾の調度として格調高い存在感を放ちます。
酒井田柿右衛門家は江戸後期に創業し、有田を代表する金襴手・金彩磁器の名門として知られます。十三代は昭和後期から平成にかけて作陶し、人間国宝十四代(後藤)へと続く濁手技法を磨き上げました。伝統文様の再構築と現代的感覚の共存をテーマに、色絵具の層厚や筆線のリズムに新たな深みを与えています。
素地は有田産の上質磁土を用い、轆轤成形または型押しで安定した厚みを持つ器形を得ます。濁手技法は、白磁素地に鉄分を含む濁り釉を全体に掛け、還元焼成で濁りを出す方法です。金彩は下絵具焼成後に24金泥を蒔き、再焼成して定着。さらに薄墨手では、鉄絵顔料を淡く重ねることで陰影と奥行きを表現します。
花瓶の図柄は、菊牡丹文、蔓草唐草、四季花鳥文、風神雷神文などが基本。十三代はそれらを意匠的に抜粋・省略し、余白の美を重視するミニマル志向を導入。胴部中央に大ぶりの牡丹を一輪配し、肩回りに筆線の爽やかな蔓草をあしらうモダンな構成も見られます。口縁下には銀彩をアクセントに用いたものもあります。
共箱・鑑定書完備、無傷の優品は300万円~600万円。小キズや軽微な補修跡がある場合は150万円~300万円、箱書きのみで来歴不明のものは80万円~150万円が相場です。限定窯変や特注図柄、作品番号付きのものはさらに高額取引されることがあります。
濁手は貫入(かんにゅう)が入りやすいため、急激な温度変化を避けて温冷の差を抑えます。金彩部分は摩耗しやすいので、指紋や油脂が付かないよう綿手袋を着用し、柔らかな布で優しく乾拭きしてください。展示や保管は湿度50~60%、室温20℃前後を維持し、強い日差しを避けましょう。
十三代酒井田柿右衛門作花瓶は、伝統技法の深化と現代意匠の融合によって生まれた骨董的価値の高い逸品です。作家銘・共箱、釉調と金彩、図柄の完成度、保存状態、来歴資料の五要素が揃うことで、茶道具コレクターやアートピース愛好家から熱い評価を集めています。
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