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十三代酒井田柿右衛門は、佐賀県西松浦郡に十二代・正次の長男として1906年に生まれ、父とともに江戸中期に衰退した「濁手(にごしで)」技法の復元に成功しました。
1953年以降、乳白色の素地に繊細な色絵を施す柿右衛門様式を継承・発展させ、日本伝統工芸展や一水会での出品・審査員を務めるなど精力的に活動。
1961年には佐賀県重要無形文化財に認定され、1963年には「柿右衛門(濁手)」技術が国の重要無形文化財総合指定を受け、その保持者として認定されました。
紫綬褒章や勲四等旭日小綬章など数々の栄誉を得て、1982年に没後は正五位叙勲、有田町名誉町民の称号を受けています。
柿右衛門様式は、上絵付け(色絵)による華やかな文様が特徴で、特に鳥獣・花卉文(菊や椿)、「松竹梅」「鶉と粟」などの伝統図柄が多用されます。
素地は米のとぎ汁のような透明感ある乳白色「濁手(にごしで)」と呼ばれ、その上に柔らかな赤・黄・藍・緑の5色ほどのパレットで、余白を生かした余情ある構図に描き込まれるのが魅力です。
十三代は1953年に十二代とともに濁手の製造法を復元し、従来の保守的な図様から写生に基づく自由な意匠へと一歩踏み出したことで、現代性を備えた新たな柿右衛門様式を確立しました。
十三代酒井田柿右衛門作は、国から「重要無形文化財総合指定保持者」として認定されたことに加え、入手の難易度の高さや作品の保存状態がそのまま評価に直結します。
優品は国内外のオークションやギャラリーで数十万円~百万円台で取引されることもあり、時に伝統的意匠を踏襲した作品が高額落札されるケースもあります。
たとえば、同工房の“鳳凰・菊文様”花瓶は海外オークションでUS$1,100超の入札履歴が確認されています。
真作を見分ける重要なポイントは、作品底部の銘「柿右衛門十三代」または「酒井田柿右衛門」の朱印捺印の有無です。
併せて、濁手の乳白地の質感が滑らかかつ均一であること、上絵の色硬化にムラがないことを確認します。
箱書き(共箱)には作者または工房名、作品名、落款が記されるため、provenance(来歴)を示す重要資料となります。
また、鋳破れや貫入などの経年変化が適度に見られるものは、希少性とともに骨董としての味わいを高める要素といえます。
柿右衛門作品は高温焼成・色絵付け後に低温焼成を行う多工程のため、急激な温度変化や衝撃に弱い面があります。
展示・保管時には直射日光や高湿度を避け、緩衝材を用いて個別に包むことが必要です。
また、長期保存に際しては、作品表面のホコリを柔らかい筆や布で丁寧に除去し、水洗いは極力控えるのが望ましく、専門家による定期的なメンテナンスを推奨します。
十三代酒井田柿右衛門は、国の「重要無形文化財」保持者として、伝統的「濁手」技法の復元と意匠革新を同時に成し遂げた名工です。
コレクションとしての希少性、独自の技法・作風、公式な認定履歴により、骨董品市場で高い評価を受けています。
購入や売却を検討する際には、銘・共箱の確認、作品状態の詳細チェック、適切な保存管理が骨董品としての価値維持に不可欠です。
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